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Case Study 症状別事例

2026.10.27

前十字靭帯損傷

中学生・高校生が前十字靭帯を損傷したら手術は受けられる?手術の適切な時期は?

執筆児玉 紗椰(アスレティックトレーナー)

高齢者への運動指導と学生アスリートのリハビリ現場で活躍。運動経験の少ない方や苦手な方が無理なく自分のペースで運動できるように、温かい指導を行う。

前十字靭帯損傷はスポーツをしている中学生、高校生にとって最も注意したいケガの1つです。

バスケットボールやサッカーなど、ジャンプや切り返しが多い競技は特に膝に負担のかかる動きが多いため注意が必要になります。

前十字靭帯とは

前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)は、膝関節の中にある重要な靭帯の一つです。

主な役割は、すねの骨(脛骨)が前方へ移動しすぎることを防ぐことや、膝のねじれ(回旋)を制御することです。

ジャンプの着地や急激なストップ、方向転換、相手との接触など、膝に大きな負担がかかる動作の多いスポーツは、前十字靭帯損傷が起こりやすい競技と言えます。

前十字靭帯損傷が中学生・高校生に多い理由

中学生・高校生は身体が大きく成長する時期であると同時に、練習量や競技レベルも大きく向上します。

そのため膝への負担が増え、前十字靭帯損傷のリスクも高くなります。

骨と筋肉のアンバランス

骨が急激に成長にするのに対して、筋肉や靭帯、腱の発達が追いつかず体が硬くなりやすいため関節への負担が大きくなり前十字靭帯を損傷するリスクが高くなります。

そのため、成長に合わせて筋力や柔軟性を高めることが重要です。

筋力強化しながら、ストレッチで柔軟性を高め、ウォーミングアップやクールダウンを十分に行い、骨の成長に筋肉や腱が適応できる身体づくりを行うことが前十字靭帯損傷の予防につながります。

筋力・神経筋コントロールの未熟さ

中学生・高校生では、骨の成長に対して筋力や神経筋コントロールが十分に発達していない場合があります。
神経筋コントロールとは、自分の身体を思い通りに動かし、関節を安定させることです。

これが未熟な状態では、ジャンプの着地や方向転換の際に膝が内側に入る(ニーイン)などの動作が起こりやすくなり、前十字靭帯に大きな負担がかかります。

そのため、筋力トレーニングだけでなく、バランス能力や正しい動作を身につけることも、前十字靭帯損傷の予防には重要です。

練習量の増加

中学生・高校生になると練習量や試合の数が増加する傾向があります。

十分な休養が取れないまま練習を続けると疲労は蓄積し、着地や方向転換時にフォームが崩れやすくなり前十字靭帯を損傷するリスクが高くなります。

適切な休養をとり、疲労をできるだけ翌日に持ち越さないように練習前後のウォーミングアップ、クールダウンを徹底して行うことが大切です。

中高生も前十字靭帯を損傷すると手術しないといけないのか

中学生・高校生で前十字靭帯損傷と診断されると、選手だけでなく、保護者の方も「手術は必要なのか」「この先スポーツを続けられるのか」と不安を感じると思います。

前十字靭帯は自然に元の状態へ修復されることが難しい靭帯です。

そのため、方向転換やジャンプを繰り返す競技への復帰を目指す場合は、靱帯再建術(前十字靭帯再建術)が選択されることがほとんどです。

保存療法

保存療法は、手術を行わずにリハビリテーションを中心として膝の機能回復を目指します。

競技レベルや日常生活への支障が少ない場合には、筋力トレーニングやリハビリを中心に保存療法を選択する場合もあります。

しかし、バスケやサッカーのようなジャンプや方向転換を繰り返し行う競技では膝崩れ(膝の不安定感)が残ります。

他にも、踏ん張りきれずに再受傷を繰り返すと半月板や軟骨まで傷つき将来的に変形性膝関節症に進行するリスクが高くなります。

そのため激しい動きの必要な競技を続けていくためには靭帯再建術が推奨されています。

手術療法

手術療法では、ご自身の太ももの裏の筋肉の腱(ハムストリングス)や、お皿の下の腱(膝蓋腱)などを使って、新しい靭帯の代わりを作ります。

大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)に元の前十字靭帯と同じ位置を通るように専用のドリルで穴をあけ、採取した腱を穴に通し専用のネジなどで骨に固定する手術を行います。

しかし、中学生など成長期の選手では骨の成長に関わる「骨端線」が残っている場合があります。

この骨端線が残ったまま骨に穴をあけてしまうと骨端線が傷ついてしまい、骨の成長が止まってしまう、足が伸びなくなるなどの症状が起こってしまう可能性があります。

そのため、すぐに手術を行うのではなく骨の成長状態や膝の状態を確認した上で手術の時期や方法を慎重に検討します。

現在では、骨端線を傷つけない特別な手術もあり、成長期でも手術を選択する場合もあります。

治療方法は、年齢や骨の成長状態、膝の不安定性、競技レベル、今後の目標などを総合的に判断し、一人ひとりに合った治療方針が選択することが大事です。

前十字靭帯のリハビリについて

前十字靭帯損傷後のリハビリは、競技復帰だけでなく、再受傷を防ぎながら長く競技を続けられる身体づくりを目標に行います。

中学生や高校生では、骨や筋肉が発達途中であるため、一人ひとりの成長段階や回復状況に合わせて段階的にリハビリを進めることが重要です。

リハビリでは、膝の可動域や筋力の回復だけでなく、ジャンプの着地や方向転換など、競技に必要な動作の段階を少しずつ上げて実施していきます。

また、中学生・高校生では「早く試合に出たい」という気持ちが強くなりやすいです。
特にチームの中心選手や公式戦を控えている場合、焦りから無理をしてしまう場合があります。

しかし、前十字靭帯損傷は復帰を急ぎ、きちんとした動作が獲得できていないのに次々にリハビリを進めてしまうと再受傷のリスクが高くなってしまいます。

焦らず段階的にリハビリを進めることが安全な競技復帰につながります!

前十字靭帯損傷後のリハビリの流れや各時期に行うトレーニングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
>> 前十字靭帯損傷のリハビリテーション

中学生・高校生の前十字靭帯損傷は手術のタイミングが重要

前十字靭帯損傷は育成年代のスポーツ選手に多いケガの一つですが、成長期の選手は手術を受けるタイミングが大切となります。

復帰に1年近くかかる怪我なので、出来るだけ早く手術を受けて復帰しなければ、学生期間に結果を残すことが難しいです。

ただし、上記で説明したように骨が成長し切る前に手術を受けてしまうと、将来的な身体の成長に影響が出てしまうかもしれません。

前十字靭帯を損傷してしまったジュニアアスリートは、焦らず医師、コーチ、トレーナーと相談して適切な手術時期を決める必要があります。

手術が早くなり過ぎないように、また遅過ぎて復帰しても出られる試合がない、ということにならないようにしなければいけません。

学生本人と親だけで決めてしまわず、競技に携わる様々な立場の方から意見を聞いて治療方針を決めることが大切です。

 

前十字靭帯断裂についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

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