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Case Study 症状別事例

2022.08.02

肉離れ

ノルディックハムストリングスで肉離れの発生率が半分に

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。専門は"病院で治らなかった身体の痛み"のリハビリ。

ノルディックハムストリングスというトレーニングが、ハムストリングスの肉離れが起こる確率を半減するという研究結果が発表されました。

これは2019年に書かれた論文で紹介されています。

この研究によると、ノルディックハムストリングスを行った人は、行わなかった人に対して最大で51%も肉離れの発生率を軽減できたようです。

ハムストリングスの肉離れを予防するなら、ノルディックハムストリングスを取り入れないという選択肢はない、とも言えてしまうかもしれません。

論文の概要

今回の研究は、これまでノルディックハムストリングスと肉離れの予防に関して発表された15本の論文を一つの論文にまとめる、”メタアナリシス”という方法で行われています。

この15本の論文も、1590本の論文から質の高い論文だけが選ばれました。

多くの論文をまとめることで、被験者数が8459人525例のハムストリングスの肉離れを対象とした莫大なデータを使った研究となりました。

また、それぞれの論文の被験者はプロスポーツ選手から学生やアマチュア選手、競技もサッカー、ラグビー、野球と幅広いです。

ハムストリングスの肉離れ効果

集められた論文それぞれで、以下のような比較が行われました。

ノルディックハムストリングスをした人の肉離れ発生率
vs
ノルディックハムストリングスをしなかった人の肉離れ発生率

そして、全ての論文の結果が一つにまとめられ、ノルディックハムストリングスは本当に肉離れの予防効果があるのか?が調べられました。

結論から言うと、ノルディックハムストリングスを行ったグループは、ハムストリングスの肉離れが51%も低下しています。

この図ではわかりにくいですが、赤い四角で囲んである0.49という数字が統計学的に計算された数字です。

これはRisk Ratioという比較方法で、ノルディックハムストリングスを行ったグループの肉離れ発生率が、行わなかったグループに対して49%だった、と解釈します。

発生率が49%ということは、51%低下しているということになり、”肉離れの発生率は半減している”と考えられます。

さらに厳格な比較

次に、集められた15本の論文の中でもさらにエビデンスの強い、8本の論文だけで同じ比較をしています。

この8本の論文だけで算出されたRisk Ratioは0.52でした。

さらに、少し先入観が入っている可能性のある1本の論文を抜いた7本で比較をしても、Risk Ratioは0.55という数字になりました。

1590本の論文からかなり入り口を狭めて、エビデンスの非常に強い論文だけで比べても、肉離れの派生率が45%軽減されるという結果になりました。

この研究結果をまとめると、ノルディックハムストリングスを行うことでハムストリングスの肉離れは45%〜51%軽減することが期待できそうです。

論文の考察

それでは今回の論文をもう少し細かく読み解いていきましょう。

信頼できる研究結果

この論文は研究の中でも、最もエビデンスの強いシステマティックレビューという研究方法で書かれています。

非常に多くの論文から信頼できる論文だけが集められているだけでなく、8459人の被験者と525例の肉離れというデータの多さも研究の信頼度を高めています。

ノルディックハムストリングスがハムストリングスの肉離れ予防に効果的ということは、ほぼ否定できない情報かもしれません。

幅広い被験者とスポーツで効果

今回の研究で使われた論文では、様々な被験者とスポーツが対象となっています。

このため、ノルディックハムストリングスの肉離れ予防効果は”スポーツや競技者を限定せず、誰に対しても効果的”と考えることができます。

プロスポーツ選手から趣味で競技をしている人まで、運動する多くの人に予防効果が期待できそうです。

トレーニング方法がバラバラ

この論文で注意すべき点は、集められた15本の論文それぞれでノルディックハムストリングスのメニューが違っていることです。

ある論文では週に2回で8回を3セット、別の論文では週に1回3セットで回数はそれぞれ12回、10回、8回、というようにバラバラです。

ハムストリングスの予防効果を最大限高めるためには、どのメニューが良いのか疑問が残ります。

しかし別の見方をすると”ノルディックハムストリングスはどのようなメニューで行っても、平均で50%肉離れを予防できる優秀なトレーニング”と考えることもできます。

まとめ

今回の論文では、”ノルディックハムストリングスを行うことで、ハムストリングスの肉離れを半減させることができる”という研究結果が出ています。

ハムストリングスの肉離れはスポーツ中に起きやすく、再発率も非常に高い怪我です。

肉離れで練習や試合を休まなくてもいいように、普段からノルディックハムストリングスで予防することが大切です。

肉離れに関しては、こちらのページで治療法やリハビリも紹介しています。

こちらの記事では”ノルディックハムストリングスを練習前後に行うと、肉離れの発生率をより低下させる”という論文を紹介しています。

参考文献
van Dyk N, Behan FP, Whiteley R. Including the Nordic hamstring exercise in injury prevention programmes halves the rate of hamstring injuries: a systematic review and meta-analysis of 8459 athletes. Br J Sports Med. 2019 Nov;53(21):1362-1370. doi: 10.1136/bjsports-2018-100045. Epub 2019 Feb 26. PMID: 30808663.

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