2025.11.29
肉離れ
【最新】ノルディックハムストリングの効果を論文から解説
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

ノルディックハムストリング(ノルディック・ハムストリング・エクササイズ(Nordic Hamstring Exercise, NHE))というトレーニングが、ハムストリングスの肉離れが起こる確率を半減するという研究結果が、複数の研究結果を統計的に評価した大規模な研究にて2019年に発表されました。
今回は、この研究結果を解説し、ノルディックハムストリングの重要性を解説していきます。ハムストリングスの肉離れを予防したい運動家やアスリート、スポーツ選手、またはトレーニングを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
| この記事でわかること |
|

1. 論文の概要
今回の研究は、これまでノルディックハムストリングと肉離れの予防に関して発表された1590本の論文から、より質の高い15本の論文をの結果を元に解析され、より信頼性のある高い結論を導き出す、“メタアナリシス”という方法から発表されました。
多くの論文をまとめたため、被験者数は8459人、525例のハムストリングスの肉離れを対象とした大規模なデータを使った研究となり、研究データとしては最大級の論文となります。
また、それぞれの論文の被験者は、北米、イギリス、ヨーロッパ、スカンジナビア、オーストラリアなど世界中の国や地域が含まれ、さらに、プロスポーツ選手から学生、やアマチュア選手、性別も男女どちらも含み、競技はもサッカー、ラグビー、野球と幅広いアスリートのデータが含まれています。
| 対象地域 | 北米(3件)、イギリスおよびヨーロッパ(7件)、スカンジナビア(5件)、オーストラリア(1件)など、世界中のさまざまな地域からのデータが含まれています。 |
| 性別 | 2件が女性アスリート、残りの13件が男性アスリートを対象。 |
| 競技 | サッカー、ラグビー、野球、オーストラリアンフットボール |
| 年齢層 | 主に18~40歳の選手、13~18歳のユース選手対象もあり |
| 競技レベル | 最高レベルの競技会から、カレッジ、ユース、アマチュアの選手まで |
| NHEプログラム | NHE(ノルディック・ハムストリング・エクササイズ)が単独で実施された研究(6件)、FIFA 11+プログラムの一部として含まれた研究(4件)、あるいは他の筋力トレーニングやウォーミングアップと組み合わせて実施された研究 |
2. ハムストリングスの負傷率が最大51%減少
集められた論文で、以下の比較をし、まとめられました。
| ノルディックハムストリングをした人の 肉離れ発生率 vs ノルディックハムストリングをしなかった人の 肉離れ発生率 |
これにより、研究者たちはノルディックハムストリング(NHE)がハムストリング肉離れ予防効果にどのように影響するかを検討したところ、ノルディックハムストリング(NHE)を行ったグループは、ハムストリングスの肉離れが51%も低下したという結果となりました。

こちらの図では、ノルディックハムストリング(NHE)の結果に偏りがないかを説明しています。赤い四角で囲んである0.49という数字が統計学的に計算された数字で、ノルディックハムストリングスを行ったグループの肉離れ発生率は、行わなかったグループに対して49%だった、という意味となります。
発生率が49%ということは、51%低下しているということになり、“肉離れの発生率は半減している”と考えられます。
さらに、少し先入観が入っている可能性のある1本の論文を抜いた7本で比較をしても、Risk Ratioは0.55という数字になり、肉離れの派生率が45%軽減されるという結果になりました。

この研究結果より、ノルディックハムストリング(NHE)を行うことで、ハムストリングスの肉離れは45%〜51%軽減することが期待できそう、ということが分かりました。
3. 論文の信頼性と効果
それでは今回の論文の被験者と研究方法を元に「信頼性のある情報なのか」をもう少し細かく読み解いていきましょう。多くのデータを元にした分析であるため、今回の結果は様々な方に有益な情報であると言えます。
① 信頼できる研究結果である
この論文は研究の中でも、最もエビデンスの強いシステマティックレビュー(Systematic Review)という研究手法で公開されています。システマティックレビューとは、特定の質問(例:NHEはハムストリング肉離れを防ぐか?)に対して、存在するすべての質の高い研究を系統的かつ包括的に収集・評価・統合し、結論を導き出す研究手法です。
冒頭で説明したように、非常に多くの論文から信頼できる論文だけが集められた“メタアナリシス”のデータだけではなく、8459人の被験者と525例の肉離れというデータの多さも、研究の信頼度を高めています。
ノルディックハムストリング(NHE)がハムストリングスの肉離れ予防に効果的ということが、最も信頼性の高いエビデンスとして公開された研究結果と言えます。
② 幅広い被験者とスポーツによる効果への期待

今回の研究で使われた論文では、様々な被験者とスポーツが対象となっています。
このため、ノルディックハムストリングスの肉離れ予防効果は“スポーツや競技者を限定せず、誰に対しても効果的”と考えることができます。
プロスポーツ選手から趣味でスポーツや競技をしている人まで、10代のユースアスリートまで、運動する多くの人に予防効果が期待できそうです。
③ 様々なトレーニング方法でも対策可能
この論文で注目すべき点は、集められた15本の論文それぞれで「ノルディックハムストリング(NHE)のメニューが異なっているのに、良い結果が出ている」ことです。
ある論文では週に2回で8回を3セット、別の論文では週に1回3セットで回数はそれぞれ12回、10回、8回、というようにトレーニングの回数は様々です。
ハムストリングスの予防効果を最大限高めるためには、どのメニューが良いのか疑問が残りますが、別の見方をすると “ノルディックハムストリングはどのようなメニューで行っても、平均で50%肉離れを予防できる優秀なトレーニング” と考えることもできます。
4. ノルディックハムストリング(NHE)を肉離れ予防に取り入れよう!
今回の論文は、“ノルディックハムストリングスを行うことで、ハムストリングスの肉離れを半減させることができる”という研究結果を公開していました。
ハムストリングスの肉離れはスポーツ中に起きやすく、再発率も非常に高い怪我です。
肉離れで練習や試合を休まなくてもいいように、また、パフォーマンスを最大限引き出せるコンディションを保つために、普段からノルディックハムストリングスで予防することが大切です。ぜひ積極的にトレーニングに取り入れてみましょう。
さらに、“ノルディックハムストリングスを練習前後に行うと、肉離れの発生率をより低下させる”という研究結果も公開されています。合わせて参考にしてみてください。
Lifelongでは肉離れのリハビリも行っています。こちらのページで治療法やリハビリも紹介しています。検討中の方はぜひご覧ください。
関連する記事
-
2025.11.29
【予防法】練習“前後”のノルディックハムストリングが肉離れ防止に効果あり
-
2025.11.29
【最新】ノルディックハムストリングの効果を論文から解説
-
2023.09.29
肉離れ








