2024.11.12
変形性膝関節症
変形性膝関節症の手術について〜治療方法と選択のポイント〜
執筆大澤 亮(理学療法士)
有名なスポーツ整形外科で主に手術直後のリハビリを担当。病院で培った臨床技術を活かし、ジュニアアスリートから高齢者の運動愛好家まで幅広い年代のリハビリを得意とする。自身のスポーツ歴は野球、バスケ、カヌー。
変形性膝関節症は、膝の関節にある軟骨がすり減り、関節が変形して痛みや動きの制限を引き起こす病気です。
加齢や過去のケガが原因となることが多く、痛みや可動域制限によって、生活の質が低下してしまうことがあります。
この記事では、変形性膝関節症の治療方法のひとつである「手術」について解説し、手術を検討する際のポイントを紹介します。
変形性膝関節症の手術の種類
変形性膝関節症の手術には、患者の状態に応じてさまざまな方法があります。
- 関節鏡視下手術
- 高位脛骨骨切り術
- 人工膝関節置換術
これらの手術方法が考えられます。
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術は、膝に小さな切開を入れ、関節鏡というカメラを使って内部を観察しながら行う手術です。
この手術は、膝の軟骨の損傷部分を除去したり、滑膜(関節の内側を覆う膜)を切除したりすることが目的です。
関節鏡視下手術は侵襲が少なく、回復も比較的早いとされますが、関節が大きく変形している場合や軟骨の損傷が重度の場合には適応されないことが多いです。
症状が比較的軽度で、痛みの原因が特定されている場合に有効な方法です。
高位脛骨骨切り術
高位脛骨骨切り術は、膝関節の片側がすり減っている場合に行われる手術です。
具体的には、膝の負担を分散させるために、脛骨(すねの骨)を切り、骨の角度を調整して負担のかかる部位を変えるという方法です。
この手術は、特に活動的な若年層や中年層の患者に適応されることが多く、関節を置き換えずに自然の関節を温存できる点が特徴です。
しかし、回復に時間がかかり、術後のリハビリが重要になるため、手術後の生活に時間を取れる方に向いています。
人工膝関節置換術
人工膝関節置換術は、膝関節の軟骨がすり減り、痛みが強い重症例に行われる手術です。
この手術では、損傷した関節部分を取り除き、人工の膝関節に置き換えます。
金属やポリエチレン製の人工関節が使われ、寿命は一般的に15~20年程度と言われています。
人工関節置換術は、変形性膝関節症の進行が進み、日常生活に支障が出ている場合に推奨される手術で、術後の生活の質が大きく改善する可能性があります。
ただし、人工関節は摩耗することがあり、若年層には再手術が必要になるリスクもあります。
手術を検討する目安
手術を検討する目安は、患者の痛みの程度や日常生活への影響、薬物療法やリハビリなどの保存的治療を行っても症状が改善しない場合です。
例えば、次のような場合に手術が検討されることが多いです。
日常生活に支障が出るほどの痛みがある
- 階段の上り下りがつらい
- 長時間歩くのが難しい
このような場合には、手術による改善が期待できます。
保存的治療が効かない
薬やリハビリ、注射治療などを行っても効果がない場合、手術によって痛みを取り除くことが有効な選択肢となります。
膝の変形が進んでいる
膝がO脚やX脚に変形している場合や、関節が不安定で歩行に支障がある場合には、人工膝関節置換術が適応されることが多いです。
手術後のリハビリと生活
手術後は、リハビリが非常に重要です。
特に人工膝関節置換術や高位脛骨骨切り術の場合、筋力トレーニングや関節の動きの回復を目指してリハビリを行うことが必要です。
リハビリを怠ると関節の可動域が制限されたり、術後の回復が遅れたりするため、医師や理学療法士の指導のもと、計画的に取り組むことが大切です。
また、人工膝関節の場合、激しいスポーツや過度な動きは避けるようにし、関節を長持ちさせることが望ましいとされています。
手術のメリットとデメリット
手術にはいくつかのメリットとデメリットがあります。
メリット
- 痛みの改善
- 日常生活の質の向上
- 運動量の増加
デメリット
- 感染症のリスク
- 再手術の可能性
このようなメリットとデメリットが存在します。
手術に踏み切る際は、自分のライフスタイルや将来的な健康状態を考慮し、医師と十分に相談することが大切です。
まとめ
変形性膝関節症の手術は、症状の改善と生活の質の向上に大きく寄与することが期待されますが、手術の種類や適応は患者の状態によって異なります。
日常生活に支障が出ている、保存的治療が効果がないといった状況で手術を考える場合、医師としっかり相談し、最適な治療法を選ぶようにしましょう。
術後のリハビリも成功の鍵となるため、しっかりとしたアフターケアも計画に組み込んでおくことが、より良い結果を得るために重要です。
また、手術を検討される前に一度、運動療法や保存療法によって痛みが緩和される可能性もあるので、まずはできるだけ手術をせずに改善を目指し、どうしても良くならなければ手術を受ける、という選択も考えてみてください。
変形性膝関節症についてより詳しく知りたい方は、こちらを参考ください。
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