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Case Study 症状別事例

2022.06.27

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷の症状を一覧にして解説

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。専門は"病院で治らなかった身体の痛み"のリハビリ。

膝を怪我した瞬間、「もしかして前十字靭帯を痛めたかも?」と不安に思う人が多いと思います。

そんな人のために、この記事では前十字靭帯を損傷したときに現れる症状についてまとめています。

記事の内容
  1. 前十字靭帯損傷直後はどのような症状が出る?
  2. 前十字靭帯損傷の症状一覧

膝を痛めている人は、ぜひご自身の膝の症状とここに書かれている症状を見比べてみてください。

もし多くの症状が自分に当てはまる場合は、前十字靭帯損傷の可能性があるので、病院で詳しい検査を受けるようおすすめします。

前十字靭帯を損傷したら、このように症状が出る

スポーツ中に膝を痛めてしまったら、前十字靭帯を損傷してしまったのでは?と心配になると思います。

まず初めに、過去実際に私の目の前で前十字靭帯断裂が起こり、応急処置をした状況を紹介します。

これを読むことで、”前十字靭帯を損傷したらどのように症状が出るのか?”をイメージしてもらうことができます。

ご自身が前十字靭帯を痛めているのではないか?と思っている人は、怪我の状況がご自身と似ているか比較しながら読んでみてください。

練習中に前十字靭帯を断裂したサッカー選手

”A選手はサッカーの試合中、自分の目の前で方向転換をした相手選手に追いつこうと切り返し動作をしました。その瞬間、左膝が内側に入ると同時に、地面に崩れ落ちました。
A選手は激痛のため動くことも、膝を動かすこともできません。A選手は「膝からブチッという音が聞こえた」と言います。
歩けないので担架を使ってコート外に移動させましたが、膝が急激に腫れてきました。同時に、膝に力が入らなくなり、曲げ伸ばしもできませんでした。
10分ほど経って少し落ち着いたときには、「さっきよりも痛みはかなり引いたけど、膝が緩くてグラグラする」と言い、体重をかけて歩くことが難しかったです。”

これは実際にサッカーの試合中に起きた出来事で、後日この選手は病院で前十字靭帯断裂と診断されました。

怪我直後に現れた症状をまとめます。

  •  膝の激痛
  •  可動域制限
  •  膝からブチッという音
  •  歩くことができない
  •  膝が急激に腫れる
  •  膝に力が入らない
  •  少し経つと痛みが軽減
  •  膝の不安定感
  •  体重をかけることができない

この症状が実際に私が応急処置をした前十字靭帯損傷で見られた症状です。

もし膝を痛めた際の状況が似ていたら、前十字靭帯の損傷が疑われます。

前十字靭帯を怪我した可能性が高いと感じる人は、こちらのページで前十字靭帯損傷の治療法やリハビリについて詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

前十字靭帯損傷の症状一覧

それでは前十字靭帯を損傷した際に見られる代表的な症状を紹介します。

痛み

膝に前十字靭帯損傷の痛みを感じている陸上選手

前十字靭帯損傷で最もわかりやすい症状は痛みです。

怪我をした瞬間に、膝に激痛を感じる人がほとんどです。

前十字靭帯を痛めたときに特徴的なのが、少し時間が経つと痛みが引くことです。

受傷直後はかなりの激痛ですが、10分ほど経つと痛みは落ち着きます。

また、怪我をしてから2、3週間経過すると、痛みをほとんど感じないこともあります。

全ての人に共通するわけではないですが、前十字靭帯を損傷したほとんどの人にこの痛みの変化が見られます。

ポップ音

ポップ音というのは、”プチッ”や”ブツッ”といった靭帯が切れる音です。

これは前十字靭帯やアキレス腱などの丈夫な組織が断裂するときに、よく現れる症状です。

実際に前十字靭帯を断裂した人のほとんどが、このポップ音を聞いたと話します。

逆に、膝を痛めたときにこのポップ音が聞こえなければ、前十字靭帯の完全断裂ではない、もしくは別の怪我である可能性が高いです。

膝の腫れ

前十字靭帯を損傷すると膝関節内で出血するので、膝が大きく腫れてしまいます。

前十字靭帯を損傷費た膝の見た目

(画像はGP Onlineより)

特に靭帯を断裂したときは、膝が急激に腫れるのが特徴的です。

しかし注意して欲しいのは、前十字靭帯を損傷しても膝が腫れないこともあります。

”膝が腫れていない=前十字靭帯は大丈夫”ではないことがあるので、気をつけてください。

また、膝の腫れは前十字靭帯再建手術と術前リハビリに悪影響を及ぼすので、できるだけ早く改善するようにしましょう。

可動域制限

前十字靭帯を損傷した後に関節の可動域が大きく低下します。

これは怪我による痛み、関節内の腫れなどが原因で膝を動かすことができなくなるためです。

怪我直後には真っ直ぐに伸ばすことも、かかとがお尻につくぐらい曲げることもできません。

しかし、痛みと腫れが軽減していくと、少しずつ可動域も改善していきます。

痛みを我慢して無理やり膝を動かすのではなく、痛みのない範囲で少しずつ可動域を戻していきましょう。

不安定感

膝の不安定感を訴える選手は「膝がグラグラする」という表現をよく使います。

前十字靭帯は太ももの大腿骨とすねの脛骨を繋いでいる靭帯で、主な役割は脛骨が前に移動しすぎるのを防ぐことです。

膝関節の解剖学イラスト

この靭帯が断裂や損傷してしまうと、膝関節内の安定性がなくなり、膝がゆるく感じてしまいます。

ときには”膝崩れ”と呼ばれるように、歩いている最中に膝が抜けてしまうこともあります。

特に前十字靭帯を怪我したまま歩行するときには、バランスを崩さないように注意しましょう。

関節の不安定感がある状態で日常生活やスポーツを続けていると、骨同士がぶつかってしまい、半月板や軟骨損傷といった合併症や後遺症につながる危険があります。

筋量低下

前十字靭帯を怪我したときは、膝関節を動かす筋肉の筋力低下が見られます。

これも可動域制限と同じように、膝関節の痛みと腫れが原因であることが多いです。

膝を動かさない時間が長くなるほど筋力は低下してしまうので、痛みのでない範囲で膝まわりの筋肉を動かすようにしましょう。

痛みが強くて動かせないときは、関節を動かさなくても筋肉の活動が起こる”アイソメトリック”というトレーニング方法が効果的です。

荷重できない

特に前十字靭帯を損傷した直後は膝の痛みと不安定感が強いので、怪我した足に体重をかけることができません。

痛みが引いた後も膝がグラグラして安定しないため、歩行中で片足荷重になる瞬間に恐怖感を覚えます。

怪我した本人は普通に歩いているつもりでも、どうしても痛めた足を庇って歩いてしまいます。

他人が見たり動画に歩いている様子を録画して見ると、前十字靭帯を損傷した側の足の片足で立っている時間が短いことが多いです。

膝が固まる

膝が固まることを”ロッキング”とも言いますが、これは関節可動域の低下とは違う症状です。

可動域の低下は関節の硬さによって動かすことのできる範囲が狭くなることですが、膝が固まったときは全く動かすことができなくなります。

症状の感覚としては、膝関節の中に「何かがひっかかっている」と感じることが多いです。

実際に断裂した前十字靭帯が関節内部に挟まってしまい、膝がロッキングしてしまうこともあります。

これは半月板損傷でもよく見られる症状なので、専門の検査によって前十字靭帯損傷と区別する必要があります。

まとめ

前十字靭帯を損傷したときに見られる症状は以下のとおりです。

  •  膝の痛み(激痛→鈍痛)
  •  膝からポップ音
  •  膝の急激な腫れ
  •  膝の可動域制限
  •  膝の不安定感
  •  膝の筋力低下
  •  膝に荷重できない
  •  膝が固まる

ご自身の膝に出ている症状が、これらの症状と似ている場合は前十字靭帯損傷を疑った方がいいでしょう。

その場合は、できるだけ早く医療機関で精密検査を受けることが、早期回復に繋がります。

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