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Case Study 症状別事例

2022.06.23

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷直後と手術後の見た目を解説

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。専門は"病院で治らなかった身体の痛み"のリハビリ。

スポーツや運動中に膝を痛めてしまったとき、「もしかして前十字靭帯の怪我かも?」と心配になる人も多いと思います。

この記事の前半では、”前十字靭帯を損傷した直後の膝がどのような見た目をしているか?”を解説し、後半では”前十字靭帯を修復する手術を受けた後の膝の見た目”について紹介しています。

記事の内容
  1. 前十字靭帯損傷直後の膝はどんな見た目?
  2. 前十字靭帯損傷の手術後はどんな傷跡が残る?

膝を怪我してしまった人や、これから前十字靭帯の手術を控えている人の役に立つ内容となっています。

前十字靭帯損傷直後の見た目

前十字靭帯はスポーツの怪我で最も重度な怪我と言われています。

怪我の程度によっては手術が必要なだけではなく、競技復帰には長期間のリハビリを行わなければなりません。

まず前十字靭帯についてより詳しい情報を知りたいという方は、こちらのページから先にお読みいただくことをおすすめします。

まず初めに、これが前十字靭帯を損傷した直後の膝の見た目です。

前十字靭帯を損傷費た膝の見た目

(画像はGP Onlineより)

右膝に比べ、左膝が大きく腫れているのがわかると思います。

前十字靭帯損傷は重症度によって3段階に分けられますが、2度と3度の損傷では膝が大きく腫れることが多いです。

それは、2度と3度の損傷では、前十字靭帯に部分断裂や断裂が起こるからです。

前十字靭帯の重症度
  • 1度損傷(軽度):靭帯が少し伸ばされる
  • 2度損傷(中度):靭帯の部分断裂
  • 3度損傷(重度):靭帯の完全断裂

軽度な1度損傷では前十字靭帯へのダメージも小さいので、膝の見た目に大きな変化が表れないことが多いです。

膝が腫れないことも

ここで中止していただきたいことが、”前十字靭帯を怪我しても腫れないことがある”ということです。

これは膝関節の構造が原因で起こります。

前十字靭帯の解剖学イラスト

膝関節は関節包という膜で覆われているのですが、前十字靭帯はこの関節包の中にあります。

前十字靭帯が損傷したり断裂したときでも、腫れがこの関節包の中に溜まってしまい、膝の表面状では確認できないことがあります。

これは怪我をした人や怪我の重症度によって人それぞれなので、「膝が腫れていないから前十字靭帯の怪我ではない」と決めつけないようにしましょう。

一方、膝の側面に付いている内側側副靭帯と外側側副靭帯は関節包の外に付いているので、痛めたときは腫れが確認しやすいです。

検査で見る前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷を診断するためには、医療機関での精密検査が必要となります。

肉離れや捻挫のように、触診や動作確認で判断することはできません。

前十字靭帯の損傷が疑われるときは、MRI検査で靭帯の状態を確認します。

損傷が確認されて前十字靭帯の再建手術が行われるときは、内視鏡手術などの方法で新しい靭帯を再建します。

MRI検査で見る前十字靭帯

MRI検査はレントゲン検査やCT検査で見ることのできない靭帯を確認することができます。

そのため、前十字靭帯損傷の可能性がある場合は必ず受けることになります。

実際に正常な前十字靭帯と断裂した前十字靭帯はこのように見分けることができます

MRI検査で比較する断裂した前十字靭帯と正常な前十字靭帯

(画像はSUNSHINE HOSPITALSより)

MRI検査の画像診断には専門知識が必要なのでわかりにくいかもしれません。

右のMRI画像に見られる骨から骨に繋がっている黒い線が前十字靭帯ですが、左の画像では靭帯が断裂しているので黒い線が確認できません。

内視鏡で見る前十字靭帯

内視鏡は膝に2-3箇所小さな穴を開けて、そこから細いカメラと処置具を入れて行う手術です。

手術を行った後の傷が目立ちにくいこと、カメラで実際の映像を見ながら手術を行うことができることが特徴です。

以下が内視鏡で確認した前十字靭帯です。

内視鏡で確認した前十字靭帯損傷
(画像はDr. LikoverのHPより)

上の写真が正常な前十字靭帯です。

下が断裂した前十字靭帯。出血で赤くなっているのが確認できます。

関節鏡で見る再建された前十字靭帯(画像はResearchGateより)

こちらは再建された前十字靭帯です。

新しい靭帯が紫色の糸でまとめられています。

前十字靭帯損傷後に手術を受けた膝の見た目

前十字靭帯損傷が認められた場合、スポーツ選手に限らず多くの方は靭帯再建手術を受けることになります。

現在最も一般的に行われている前十字靭帯の手術方法は3つあります。

  1. 膝蓋靭帯を使う方法
  2. 大腿四頭筋を使う方法
  3. ハムストリングスを使う方法

それでは、それぞれの手術後にどのような手術痕が残るか比較してみましょう。

異なる前十字靭帯再建術でついた手術痕

(画像は@drnimamehran[Instagram]から)

どの手術方法も前十字靭帯を治すことができますが、少しだけ違いがあります。

一番左の手術方法は膝蓋靭帯を使用した再建術ですが、この方法は膝の安定性を最大限に高めることができます。

ラグビーやアメフトなどの体の大きな選手や、対人競技を行うスポーツ選手に適応されることが多いです。

ちなみに、NBAというアメリカのプロバスケットボールで活躍するクレイ・トンプソンというスター選手も、この膝蓋靭帯を使った前十字靭帯再建手術を受けています。

中央の膝には大腿四頭筋の腱を使った再建手術が行われています。

この手術方法は膝関節に硬さが出やすいと言われているので、他の2つの手術法ほど使われることはありません。

3つの中で最も一般的なのは、右の写真にあるハムストリングス腱を使用した再建手術です。

これは内視鏡手術によって行われるので、膝に残る痕が目立ちにくいです。

さらに、膝の可動域制限が起きにくいとも言われています。

特に女性アスリートが前十字靭帯の再建手術を受ける際には、膝の傷をできるだけ小さくするために、この手術方法が選ばれることが多いです。

まとめ

今回の記事では、前十字靭帯を損傷した直後に現れる見た目の特徴と、前十字靭帯再建手術を受けたときに残る手術痕を紹介しました。

以下が記事内容のまとめになります。

  •  前十字靭帯を損傷したら膝が大きく腫れる
  •  重症度によっては腫れが目立たないこともある
  •  ”膝が腫れていない=前十字靭帯は大丈夫”ではないので注意
  •  前十字靭帯の診断にはMRI検査が必要
  •  前十字靭帯再建手術には3つの方法がある
  •  最も手術後の見た目が気にならないのはハムストリングス腱を使用した手術

この記事が、膝を痛めて前十字靭帯損傷の心配をしている人や、靭帯再建手術を受けてどれくらい手術痕が残るか不安になっている人のお役に立てば幸いです。

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