2024.08.23
前十字靭帯損傷
前十字靭帯損傷は全治何ヶ月?リハビリの流れも合わせて紹介
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
前十字靭帯損傷は特にスポーツでよく見られる怪我ですが、全治どれくらいで治るのか?気になる方も多いと思います。
このページでは神戸でリハビリ専用ジムを運営する理学療法士が、前十字靭帯損傷がどれくらいの期間で治るのか?そしてどのような経過を辿るのか?を紹介していきます。
前十字靭帯損傷の全治までの期間
前十字靭帯損傷が治るまでの時間は、怪我の程度と治療方法によって変わります。
まず怪我の程度ですが、損傷の深刻さによって3段階に分けられます。
- グレード1:前十字靭帯が少し伸ばされる
- グレード2:前十字靭帯が伸ばされて部分的に損傷
- グレード3:前十字靭帯の断裂
前十字靭帯損傷グレード1
損傷がグレード1の場合は基本的に手術は行わず、全治2-4週間になることが多いです。
前十字靭帯損傷グレード2
グレード2はあまり見られませんが、前十字靭帯は断裂していないけど部分的に切れてしまっているという状態です。
例え靱帯がまだ完全に切れていなかったとしても、スポーツ復帰を希望する人は前十字靭帯再建手術を受ける人がほとんどです。
そのため、治療期間はグレード3と同じと考えてください。
前十字靭帯損傷グレード3
前十字靭帯が完全断裂した場合は、手術による靭帯再建手術か、手術をしない保存療法を選択します。
スポーツ復帰や膝の安定性を求める方は手術を受けることがほとんどです。
前十字靭帯再建手術を受けた場合、全治は6ヶ月と考えられ、スポーツ復帰までの全治は8〜9ヶ月と設定されることが多いです。
前十字靭帯と同時に半月板や他の靭帯などを損傷してしまった場合は、追加で1ヶ月ほどかかると考えた方が良いです。
ただ、手術後3ヶ月経過する頃には日常生活はほとんど問題なく過ごせるようになります。
一方で、手術をしない保存療法を選んだ場合、痛みなく日常生活を送るまで3〜5ヶ月かかると言われています。
しかし、前十字靭帯は自然治癒する可能性が低い靱帯なので、膝の機能は回復しても靱帯が治るということはほとんどありません。
前十字靭帯の保存療法についてはこちらをご覧ください。
>> 前十字靭帯の保存療法
前十字靭帯断裂から全治するまでの経過
それでは実際に、前十字靭帯を断裂した後は、どのような流れで身体が治っていくのかを解説します。
再建手術後1ヶ月
前十字靭帯再建手術を受けた直後は強い痛みと硬さを感じます。
まずは腫れを抑えて膝の関節可動域を増やすことが重要です。
最初の1ヶ月が経過する頃には痛みなく歩けるようになります。
再建手術後2ヶ月
2ヶ月目には痛みがかなり軽減し、関節もより大きく動かせるようになってきます。
この時期には体重をかけたスクワットやランジができるようになります。
再建手術後3ヶ月
3ヶ月経過すると、再建した新しい靱帯が骨にしっかりと固定されると言われています。
そのため、この時期から簡単なジョギングを開始することが多いです。
再建手術後4ヶ月
前月で軽めのジョギングを開始できたら、この頃から少しスピードを上げたランニングも開始できます。
リハビリによる膝への負担が増えていく時期なので、膝の腫れなどに注意が必要です。
再建手術後5ヶ月
膝の強度や安定性が次第についてきます。
手術後5ヶ月ごろには片足ジャンプの練習や、前十字靭帯に負荷のかかりやすい横や斜め方向への動き、方向転換動作なども始めていきます。
再建手術後6-7ヶ月
前十字靭帯再建手術後6ヶ月は日常生活への完全復帰と考えれられます。
痛みや可動域制限はなく、普段の生活で不安に感じる動作がないことが理想です。
スポーツ復帰を目指す選手は、より強度の高いスポーツの専門的な動きを練習していきます。
再建手術後8-9ヶ月
この時期にはスポーツへの完全復帰を目指します。
全力疾走や対人での接触など、100%で練習できるようになってから試合へと復帰します。
競技復帰の時期は膝の調子や本人の心理的準備など様々な要因が影響するので、術後の期間だけで判断せずに、安全に復帰できるよう選手を相談しながら決めていきましょう。
前十字靭帯のリハビリについては、こちらのページで経過とともに行うトレーニングも紹介しています。
>> 前十字靭帯損傷のリハビリテーション
まとめ
前十字靭帯が全治するまでの期間は、靭帯の損傷程度と手術を受けるかどうかによって決まります。
軽度の損傷なら全治2~4週間。
前十字靭帯再建手術を受ける場合は全治6ヶ月で日常生活への復帰。
スポーツへの復帰は8~9ヶ月後と考えられています。
再建手術を受けない保存療法では、3~5ヶ月で膝の機能が回復するとされています。
前十字靭帯のリハビリを行う際は、全治までの期間を目安に経過が遅れ過ぎないように進めていきましょう。
前十字靭帯損傷についてより詳しい情報が必要な方はこちらをご覧ください。
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