2024.03.22
前十字靭帯損傷
スキー競技で前十字靭帯断裂後の競技復帰に向けたリハビリ
執筆大澤 亮(理学療法士)
有名なスポーツ整形外科で主に手術直後のリハビリを担当。病院で培った臨床技術を活かし、ジュニアアスリートから高齢者の運動愛好家まで幅広い年代のリハビリを得意とする。自身のスポーツ歴は野球、バスケ、カヌー。
ウィンタースポーツで人気のあるスキー競技。
趣味や競技レベル等様々な方が楽しまれていると思います。
スキー競技ではどのレベルの方に関わらず前十字靭帯損傷の頻度がかなり高いです。
スキー競技での前十字靭帯損傷はスキー中の怪我の30%を超える割合で引き起こされているという報告もあります。
記事の内容
- スキー競技で前十字靭帯を損傷する原因は?
- スキー競技復帰のための前十字靭帯のリハビリとは?
- スキー競技のリハビリで大切なポイント
この記事では、スキーという競技の特徴を考慮したリハビリの考え方と、スキー競技のリハビリで注意すべきポイントを紹介しています。
前十字靭帯を断裂したスキー競技者にとって役に立つ内容となっています。
前十字靭帯損傷から安全に、もう一度スキー競技に復帰するためにも、ぜひご覧ください。
スキー競技で前十字靭帯を損傷する原因
スキー競技では他のスポーツに比べて膝に関する怪我の割合がかなり高いです。
FIS(国際スキー・スノーボード連盟)が発表したデータによるとスキー競技中の怪我の中で30%以上が膝に関する怪我であると発表されました。
では、なぜスキー競技で前十字靭帯損傷が引き起こされるのか。
スキー競技中の前十字靭帯損傷で多い動作はターン動作による受傷が最も多いと言われています。
前十字靭帯は「膝関節が内側に入る」、「下腿が内側に入る」、「下腿が前方に出る」、これらの動作によって受傷します。
これらの条件が揃うスリップキャッチと呼ばれる状況があります。
ターン動作で受傷する際に外側の足の荷重が少なくなると後方重心になります。
滑った外側の板が再びグリップすると膝が内側に入り、板が内側に入ることで下腿が内旋し、上半身が後方に倒れることになり膝が前方に出ます。
他にも体幹が後傾した姿勢のまま耐えようとした際、後傾した姿勢での着地なども受傷する際に多い原因です。
このようにしてスキー競技中の前十字靭帯損傷が引き起こされます。
リハビリで重要なポイント
スキー競技では競技特性に合わせたリハビリがかなり重要になります。
スキー競技のリハビリでは基礎的な機能に加えて、強い衝撃に耐える筋力、再受傷しないための動作の習得が必要となります。
膝関節遠心性収縮に耐える筋力
エキセントリック収縮ともいわれる遠心性収縮ですが、膝を伸ばす筋肉は収縮しているが実際は膝関節が曲がっている動作のことを言います。
遠心性収縮は最も筋肉に対して負荷が強く、強度の高い収縮様式です。
スキー競技では着地時やターン時に重心を下げた時などが当てはまります。
リバースノルディック
- 膝立ち姿勢になる
- 後方に膝を曲げながら倒れる
- 膝を伸ばすように膝立ち姿勢に戻る
膝関節屈曲位での安定性の向上
スキー競技中は基本的に膝関節軽度屈曲位で競技を行います。
軽度屈曲位で膝関節の安定性を得られることがスキー競技において前十字靭帯損傷再受傷の予防・パフォーマンスの向上において重要になります。
膝関節屈曲位では基本的に関節は緩く動きやすい姿勢です。
この状態で膝関節の筋力が足りず、安定性が低いままであれば、関節が動き、靭帯に大きな負担がかかってしまいます。
軽度屈曲位でも安定させる筋力をつける必要があります。
ラテラルバンドウォーク
- 膝と股関節を軽く曲げる
- 足を大きく外側に開くように斜め前に出す
- 後ろの足を前足に近づける
- 反対足も同様に行い、前に進む
前傾姿勢での動作の習得
受傷の大きな要因の1つである後傾姿勢を修正することは再受傷予防の点でとても重要になります。
スキー競技での後傾姿勢は前十字靭帯損傷に大きく関与している動作です。
着地動作時に後傾姿勢にならないように着地動作、ジャンプ動作は徹底する必要があります。
ボックスジャンプ
- 地面を強く押すように高くジャンプする
- 着地は股関節を曲げて衝撃を吸収する
不安定な状況下での膝の安定性
雪上では陸上と比べて足元が滑りやすく不安定になります。
一般的なリハビリよりも不安定な状態でのバランス能力は必要になります。
BOSUスクワット
- BOSUの上に立ちバランスをとる
- BOSU上でスクワットを行う
体幹の安定性
膝のリハビリに気をとられて忘れてはならないのが体幹の安定性です。
高いバランス能力を必要とするスキー競技において体幹の安定性を高めることで膝にかかる負担を軽減させることができます。
股関節と殿筋の強化
ジャンプ動作やバランスを崩した際の着地では、股関節をうまく使って衝撃を吸収することで、膝への衝撃を和らげることができます。
また、臀部の筋力が高いほど着地でバランスを崩しにくくなり、膝崩れを起こす危険性を下げることができます。
- 上向きに寝ころび膝を立てて片足を伸ばす
- 立てた膝側の足で地面を押すようにお尻を浮かせる
スキー競技では環境も影響し、膝の怪我が多いのが特徴です。
しかし、怪我をしてしまった後もしっかりとリハビリをすれば競技拭き位は可能です。
競技復帰を目指し、怪我を繰り返さない体づくりをして長く楽しくスキー競技を行えるようにしましょう。
前十字靭帯、前十字靭帯損傷について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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