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Case Study 症状別事例

2022.07.01

前十字靭帯損傷

前十字靭帯を損傷したら装具は必要?装具の良い点と悪い点、種類や値段まで理学療法士が解説

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

前十字靭帯を損傷したとき、膝を守るために使われる装具。

装具は使っている人もいれば使わない人もいて、本当に必要なのか疑問に思う人もいると思います。

この記事では前十字靭帯損傷後に装具をつけるメリットとデメリット、そして装具の種類や値段など細かい情報もお伝えします。

前十字靭帯を損傷して装具をつける予定の人、装具を買おうか迷っている人の役に立つ内容となっています。

記事の内容
  1. 前十字靭帯損傷時に装具をつけるメリットとデメリット
  2. 前十字靭帯用装具の種類
  3. 装具の値段
  4. 装具っていつまでつけるの?

結論から言うと、前十字靭帯の損傷後に装具をつけてもつけなくても膝への影響は変わりません。

それぞれ良い点と悪い点があるので、ご自身の考えや病院の方針に合わせて選んでいただければと思います。

前十字靭帯損傷後に装具をつけるメリットとデメリット

装具は怪我した膝を守るための道具ですが、装具を使用することの利点もあれば欠点もあります。

良い点と悪い点をそれぞれ解説するので、自分には装具が必要かどうかの判断材料にしてください。

装具をつけるメリット

装具を使用するメリットは主にこの3つです。

  •  膝が安定する
  •  関節可動域を制限する
  •  怪我を予防する
膝が安定する

前十字靭帯を損傷すると、膝関節が不安定に感じます。

いつも通り歩くことができずに、片足立ちになると膝がグラグラする感覚があります。

このような状態のときに装具を着用することで、膝関節の安定性が上がります。

装具には様々な種類がありますが、中でも膝の側面に金具が入っているものはとても頑丈です。

膝に不安定感を感じている人が装具をつけると、安心して動作を行うことができるようになります。

膝関節の可動域を制限する

装具の側面にヒンジと呼ばれる装置がついているものは、膝関節の可動域を任意で調整することができます。

前十字靭帯を損傷した直後や再建手術後では、膝を大きく動かしすぎると痛みやぐらつきを感じることがあります。

装具を調整して関節可動域に制限をかけることで、不意に膝が曲がりすぎたり伸びすぎることを防ぐことができます。

膝の回復段階に合わせて少しずつ可動域を増やすことができるので、安心して膝を動かすことができます。

新たな怪我を予防する

前十字靭帯を損傷すると膝関節が不安定になりますが、膝がぐらついている状態で動き続けると、新たに怪我をするリスクが高くなります。

関節内が不安定な状態で膝を動かしたり体重をかけると、軟骨や半月板へのストレスが増加し、傷つきやすくなるからです。

膝の装具をつけることで関節が安定し、関節内の組織に必要以上の負担がかからなくなるので、関節内で新しい怪我を防ぐことができます。

装具をつけるデメリット

装具のメリットに対して、この3点が主なデメリットになります。

  •  膝の治りに関係ない
  •  過度な可動域制限
  •  お金がかかる
膝の治りに関係ない

前十字靭帯損傷後に装具をつけない理由で最も多いのは、膝の回復に関係がないと言うことです。

装具をつけたからといって膝がより安定するわけでもなく、スポーツ復帰が早くなるわけでもありません。

装具を使用することで精神的な安心感は得られますが、治療やリハビリとしての効果は期待できないと言われています。

関節可動域を過度に制限する

装具をつけることで膝関節の関節可動域を制限することは、怪我の予防という視点では効果的です。

しかし、前十字靭帯を損傷した後は膝が硬くなり、関節可動域が低下することが多いです。

硬くなった膝関節の可動域を改善することはリハビリにおいて非常に重要です。

装具をつけていると場合によっては、必要以上に関節の動きを制限してしまうので、関節可動域の改善を妨げてしまう恐れがあります。

お金がかかる

後ほど詳しく紹介しますが、装具は比較的値段の高いものが多いです。

膝をしっかり守ってくれる頑丈な装具を選ぶと、最低でも数万円必要です。

治療を担当する医者と理学療法士の方針によっては、手術後数週間しか使用しないこともあるので、高い費用を払う価値があるか考える必要があります。

また、競技によっては装具の着用を禁止しているスポーツもあるので、自分の競技では装具をつけて試合に出場できるのか調べておくことも大切です。

前十字靭帯用装具の種類

前十字靭帯用の装具には様々な種類がありますが、大きく分けると2種類に分類できます。

  • ブレース(Brace):強度の高い装具
  • スリーブ(Sleeve):伸縮性のある装具

ブレース

ブレース(Brace)は”装具”と言われてほとんどの人がイメージする固めの装具です。

膝全体を装具が包み、側面には靭帯を支えるヒンジと呼ばれる金具が付いています。

非常に強度の高い装具のため膝の安定感は強いですが、その分重くて着脱に手間がかかります。

スリーブ

スリーブは膝をすっぽりと入れるタイプの装具で、日本では”サポーター”とも呼ばれます。

ブレースに比べると強度が落ちますが、その分軽くて伸縮性が高く、洗濯機で丸洗いできるものが多いです。

(装具の写真はDJOから)

装具は、それぞれの装具の特徴を活かして使い分けると効果的です。

一般的には、前十字靭帯の損傷直後と手術後には強度の高いブレースを使い、膝が安定してより強度の高い運動ができるようになったらスリーブに変更するという形です。

膝用装具の値段

装具は種類によって値段も違います。

ブレースとスリーブによる違いもありますが、既製品とオーダーメイドでも値段が大きく変わります。

ブレース型装具の値段

強度の高いブレース型の装具の方が、平均的に値段が高いです。

具体的な金額を公表しているメーカーはほとんどありませんが、病院で注文すると10万円ほどします。

しかし保険適応となるため、実際に支払う費用は3~4万円が相場です。

スリーブ型装具の値段

スリーブタイプの装具だと比較的手を出しやすく、1〜3万円で買えるようです。

ただしサイズの調節などはできないので、自分の膝にあった製品を見つける必要があります。

前十字靭帯損傷後に装具を使う期間は?

前十字靭帯を損傷して装具を使用すると決めた後、いつからいつまで装具をつけたらいいかを解説します。

いつから装具をつける?

装具には前十字靭帯を保護する役目もあるので、怪我をしたらその日から装具を使いましょう。

装具のメリットでも説明しましたが、装具をつけることで膝関節内にある軟骨や半月板など他の組織の損傷を防ぐことができます。

また、怪我したときだけでなく前十字靭帯再建手術を受けたときも、術後すぐに装具を使い始めましょう。

いつまで装具をつける?

前十字靭帯を痛めた膝に装具を使用すると、膝関節の安定感が増します。

しかし、リハビリを進めて膝が安定するようになったら装具は必要なくなります。

一般的には手術後3ヶ月もすれば、日常生活で装具は必要なくなる人が多いです。

しかし、術後3ヶ月経ったあとも運動をするときは装具を着用したほうが安全です。

前十字靭帯の再建手術から6ヶ月経った頃に、段階的な競技復帰が始まります。

他選手と接触がない競技であれば装具を付けたままスポーツを行うことができますが、対人競技を行なっている人は難しいと思います。

そのときは、ブレース型の装具からサポーター型の装具に切り替えることで、他選手を傷つけることなく練習復帰することができます。

まとめ

今回の記事は以下の内容を紹介しました。

  •  前十字靭帯損傷後に装具を使うと安定感が上がり、新たな怪我を予防できる
  •  装具をつけてもつけなくても怪我の治りは変わらない
  •  前十字靭帯用の装具には、強度の高い”ブレース”と少し強度が落ちる”スリーブ”がある
  •  装具の相場は10万円ほどだが、保険が適応されるので3〜4万円が相場
  •  装具は怪我や手術後すぐにつけ始め、日常生活やスポーツ活動に合わせて外す

前十字靭帯用の装具にはいい面も悪い面もあるので、担当医と一緒に考えたり、ご自身でしっかり悩んで決めていただければと思います。

私個人の意見としては、前十字靭帯損傷に関しては装具は必要ないと考えています。

再建手術前後に適切なリハビリを行えば、膝の安定性を感じることなく筋力や可動域を獲得することができます。

膝の不安定感があまりに強いときには装具に頼ることも考えられますが、基本的には最大限安全に配慮した上で、道具に頼らず患者自身の筋力で膝を安定させられることが理想だと思っています。

前十字靭帯損傷についてより詳しく知りたい人は、こちらのページに情報をまとめてありますのでご参考ください。

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