練習”前後”にノルディックハムストリングで肉離れを予防

肉離れで地面に倒れるサッカー選手

今回紹介する論文は、ハムストリングスの怪我予防に関する論文です。

ハムストリングスの怪我で最も多いのは肉離れです。

ハムストリングスの肉離れはサッカーやバスケ、陸上競技など、速いスピードで走る、急に止まる、という動作が多いスポーツで頻繁に起こる怪我です。

肉離れに関して詳しく知りたい方は、こちらの記事をお読みください。

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試合中に肉離れを起こしたサッカー選手

その予防方法に関して興味深い結果が報告されたので、ぜひ有効活用していただければと思います。

参考文献は以下の論文です。

Elerian AE, El-Sayyad MM, Dorgham HAA. (2019)”Effect of Pre-training and Post-training Nordic Exercise on Hamstring Injury Prevention, Recurrence, and Severity in Soccer Players. ”

そして結論はこのように報告されました。

  • ハムストリングスの怪我が大幅に減少
  • ハムストリングスの怪我の再発率も減少
  • 怪我から復帰するまでの日数も減少
  • 練習前だけやるより効果がある

論文の概要

まずは今回の論文について説明します。

研究の目的はノルディックハムストリングというエクササイズが、ハムストリングスの怪我予防に与える影響について調べられています。

ノルディックハムストリングは、ハムストリングスの肉離れ予防として有名なエクササイズです。

ノルディックハムストリングスを行うサッカー選手

エクササイズをする人は膝立ちになり、補助者が両足を押さえます。

両足が固定された状態で、ゆっくり前に倒れていき、耐えられなくなったら両手で支えながら地面に倒れる、という種目です。

実際にやってみると非常に負荷の高い、大変なエクササイズです。

この運動がハムストリングスの肉離れに有効なことは、スポーツ業界やトレーナー業界に知れ渡っており、科学的な根拠も多く発表されています。

それではなぜ改めてノルディックハムストリングの研究が行われたかというと、今回の研究者は一つの仮説を明らかにしたかったようです。それは、

「ノルディックハムストリングを練習前だけではなく、練習後にもした方が予防の効果が高まるのではないか?」

という仮説です。これを明らかにするための研究が行われました。

 

研究が行われたのは2019年エジプト、対象はプロサッカー選手です。

合計で34名の選手が参加し、17名ずつ2つのグループに分けられました。

  • グループ1: 練習前後にノルディック
  • グループ2: 練習前だけノルディック

ノルディックハムストリングは週に2回、3ヶ月間に渡って実施されました。

負荷は週ごとに増加するように設定され、練習後のメニューは練習前の半分になっています。

3ヶ月間に起こったハムストリングスの怪我が集計され、予防の効果が調べられました。

比較対象は、グループ1、グループ2、そして今回選手が集められたクラブの、前シーズンに起きた怪我状況になります。

ハムストリングスの怪我が大幅に減少

まず一つ目の指標になったのが、ハムストリングスの怪我数です。

前シーズンでは35人の選手に対して、13回ハムストリングスの怪我が起きています。

対してグループ1では1回、グループ2では3回の怪我が今回発生しました。

怪我の発生率は以下のとおりです。

  • グループ1: 1回/17人=5.9%
  • グループ2: 3回/17人=17.6%
  • 前年度   : 13回/35人=35.1%

ノルディックハムストリングを練習前にするだけでも、怪我の発生率が半分まで減少しています。

しかし、練習前後に行った場合はわずか6分の1にまで下がりました。

ハムストリングスの怪我の再発率も減少

ハムストリングスを怪我した選手の中で、以前にも同じ場所を怪我したことのある選手も調べられました。

特にハムストリングスの肉離れは再発率の多い怪我なので、再発率を調べることは重要な項目です。

  • グループ1: 0回/17人=0%
  • グループ2: 1回/17人=5.9%
  • 前年度   : 7回/35人=18.9%

数字を見ていただければ一目瞭然ですが、練習前後にエクササイズを実施したグループの再発率は0%でした。

一方で、ノルディックハムストリングをしなかった前シーズンの再発率は約19%もあります。

過去にハムストリングスを肉離れなどで痛めてしまった選手にも、再発予防の効果が期待できそうです。

怪我から復帰するまでの日数も減少

そしてもう一つ興味深い結果が出たのが、怪我からの復帰日数への影響です。

  • グループ1: 1日
  • グループ2: 2-3日
  • 前年度   : 5-10日

この結果から伺えることは、ノルディックハムストリングを行うことによって、怪我が起きにくいだけでなく、怪我をしたときも早く復帰できるということです。

特にエクササイズを行わなかった全シーズンと比べると、約1週間も早く復帰できるという結果になります。

論文の考察

今回の研究結果を見るに、ノルディックハムストリングがハムストリングスの怪我予防に役立つことがわかりました。

特に今まで報告されなかった、練習前後で行った方が効果が高くなるという結果は大変興味深いです。

ハムストリングスの肉離れ予防をしていたのに肉離れしてしまった、という選手は、練習後にも行うことで怪我を予防できるかもしれません。

ただ注意していただきたいのは、今回の論文で疑問に残る点もあることです。

被験者数が少ない

今回の被験者は34名と少なく、おそらく全員が同じクラブの選手です。
研究対象を選ぶ上で重要な“多様性”は低そうです。

比較対象が別選手かも

データの比較対象が前年度のデータですが、恐らく選手は入れ替わっています。
同一クラブでも、同一選手でなければ正確な比較は難しいです。

ノルディックハムストリング特有か?

今回の結果がノルディックハムストリングでしか見られない効果なのか、疑問があります。
他のハムストリングスを鍛える運動との比較が必要になります。

前シーズンが極端に悪かった?

結果の比較対象が前年度の怪我ですが、少し多く見られます。
35人のうち13人もハムストリングスを怪我することは非常に珍しいです。
前年度の怪我があまりに多かったから、今回の結果が良く見えたという可能性もあります。

 

論文を読む上で重要なのは、他の論文と比較することです。

一つの研究結果を信じ込むのではなく、一つの情報として有効に使っていただければと思います。

医学は日々情報が更新されますので、少しでも多くの情報から最適な判断をしていただきたいです。

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