2023.09.21
腰椎分離症・すべり症
腰椎分離症・すべり症
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
腰椎分離症と腰椎すべり症は特にスポーツをしている子供によく見られる腰痛です。
背骨の一部が疲労骨折することで、腰への張りや痛みを感じるようになります。
このページでは神戸三宮で活動する理学療法士が、このようなお悩みを解決するための最新情報をまとめています。
記事の内容
- 腰椎分離症と腰椎すべり症に関する最新情報を知りたい
- 腰椎分離症と腰椎すべり症の治し方を知りたい
腰椎分離症と腰椎すべり症は疲労骨折が原因で起こる怪我なので、できる限り早く治療とリハビリを始めることが悪化を防ぐために大切です。
怪我が進行して重度の腰椎すべり症になってしまったら、手術を受けなければいけないこともあるので十分注意しましょう。
この記事を読み終えると腰椎分離症と腰椎すべり症への理解が深まり、悪化を防ぐためには何が大切か?ということがわかるようになります。
ぜひ正しい知識を身に付けて、1日でも早い痛みの改善に役立ててください。
腰椎分離症や腰椎すべり症に限らず、腰痛全般に関する情報はこちらにまとめてあります。
目次
腰椎分離症・すべり症とは?
まずは腰椎分離症とすべり症の違いについて確認しましょう。
腰椎分離症とは?
腰椎分離症とは腰椎の疲労骨折で、スポーツをしている若い子供に多い怪我です。
背骨は全部で24個の骨が並んでいますが、このうち腰の部分にある5つの背骨を腰椎といいます。
スポーツ動作で繰り返し腰に負荷がかかることで、腰椎の椎弓という部分にヒビが入ったり、疲労骨折してしまうのが腰椎分離症です。
椎弓という部分が骨折によって椎体という部分から離れてしまうため、”分離症”と呼ばれています。
腰椎分離症が悪化すると、腰椎すべり症になってしまいます。
腰椎すべり症とは?
腰椎すべり症は腰椎分離症が悪化したときに起こる怪我です。
腰椎分離症で腰椎の椎弓が疲労骨折したあとに、椎弓が椎体部分から完全に離れてしまうことがあります。
そして、支えのなくなった椎体が前方に滑ってしまうことを腰椎すべり症といいます。
椎体が元の位置からあまりに大きく動いてしまった場合には、手術が必要になることもあります。
腰椎分離症・すべり症の原因
腰椎分離症とすべり症になる原因は主にこの2つです。
腰への負荷
腰椎分離症とすべり症が最も起こりやすい原因は、腰への度重なる負荷です。
特にスポーツ動作で腰を大きく反る動作が影響していると考えられます。
例えば体操競技は身体の柔軟性が求められる競技なので、可動域を広げるために腰を反らなければいけません。
子供の柔らかい骨では衝撃に耐えることができずに、疲労骨折が起こってしまいます。
腰部への衝撃
スポーツ動作で少しずつかかる負荷だけでなく、腰への打撲などの衝撃で腰椎が折れ、分離症になることもあります。
特に若いうちは骨が強くないので、衝撃が当たる部位や角度によっては、一度の打撲で骨折してしまうこともあります。
腰椎分離症・すべり症の症状
腰椎分離症、すべり症ともに症状は非常に似ていますが、すべり症の方が痛みなどの症状が強いことが多いです。
腰痛
腰の痛みが最も多い症状です。
特に腰を反るときに痛みを感じる人が多く、これは腰を反ったときに損傷している椎弓がぶつかってしまうからです。
一般的な腰痛と同じ鈍痛のような重だるい痛みを感じる人もいれば、「筋肉痛のような痛み」という表現をする人もいます。
お尻やもも裏の痛み
腰だけでなく、お尻や太ももの裏に痛みを感じることもあります。
放散痛と呼ばれる痛みで、多くの腰痛に共通してみられる症状です。
運動で痛みが増加
腰椎分離症やすべり症では、運動をすると痛みが増加することが多いです。
慢性的な腰痛の場合は身体を動かすと筋肉がほぐれて痛みが減ることが多いので、運動後に腰の痛みが増えるようなら腰椎分離症かすべり症が疑われます。
腰の張り
腰の痛みだけでなく、腰の張りを強く感じることもあります。
疲労骨折している場所の周りにある筋肉が緊張することで、張りが強くなってしまうためです。
ハムストリングスの柔軟性低下
腰痛や張り感とは違う症状として、ハムストリングスというもも裏の筋肉が硬くなることがあります。
長座体前屈などのストレッチでももの裏に硬さを感じるときは、他の症状にも当てはまらないか注意しましょう。
腰椎分離症・すべり症の診断
腰椎分離症とすべり症を診断するためには、これらの画像検査を行う必要があります。
レントゲン・CT検査
レントゲン検査、CT検査ともに骨の状態を確認するための画像検査です。これらの検査は骨折を判断するためによく使われていて、腰椎分離症の疲労骨折を見つける際にも役立ちます。
CT検査の方がレントゲン検査よりも精密な画像を撮ることができますが、検査の予約が必要で費用も高くなります。
MRI検査
MRI検査では骨だけでなく周りの靭帯や筋肉の状態も確認することができます。
骨の状態だけでなく、周りの神経や筋肉の状態を確認したいときにはMRI検査が有効です。
腰椎分離症・すべり症の治療
腰椎分離症とすべり症の治療では、腰にかかる負担を減らすことが目的です。
適切な治療を行わないと最終的に手術をしなければいけなくなることもあるので、正しい治療とリハビリを受けるようにしましょう。
理学療法
腰椎分離症とすべり症の治療では腰周りの筋トレと柔軟性を上げることが効果的とされています。
腹部と背部の筋トレ
背骨に近い筋肉、特に腹横筋などの腹筋群や腰方形筋を鍛えることで背骨がより安定するようになります。
安定力が増した背骨は、よりスムーズな動きが可能となり、椎弓同士が当たりにくくなります。
また、背骨周りの筋肉がしっかり働くことで、腰椎が必要以上に動かなくなり、すべり症を防ぐことにもなります。
柔軟性改善
腰椎分離症とすべり症は背骨に負担がかかることで起きてしまいます。
特に腰を反る動きで負担がかかる人は、さらに上の頸椎や胸椎の可動域が低い人が多いです。
頸椎と胸椎の可動性上げ、腰や骨盤周りの筋肉の柔軟性を上げることで、腰にかかっている負担を減らすことができます。
コルセット
腰のコルセットの使用は特に若いスポーツ選手によく使われます。
コルセットを使う事で、腰椎の疲労骨折を支えて悪化を防ぐことができます。
ただ、コルセットは応急処置的な意味合いが強いので、腰周りの筋力強化も同時に行う必要があります。
手術
腰椎分離症が悪化しすべり症になり、さらにすべり症が進行してしまうと、手術をして腰椎を元の位置に固定する必要があります。
この手術ではボルトを使用した固定法が使われることが多いので、腰に大きな負担がかかってしまいます。
ですので、手術をしなくても良いようにへ早めに治療を開始するようにしましょう。
腰椎分離症・すべり症の予防
腰の痛みが一度落ち着いたとしても、予防を怠るとすぐに症状は再発してしまいます。
悪化して手術を受けなければいけないという状況になる前に、普段から予防に取り組むようにしましょう。
腰と股関節のストレッチ
腰回りの筋肉をストレッチして柔軟性を高めることは、腰椎分離症とすべり症の予防に効果的です。
関節の近くにある筋肉が張って緊張していると、関節がスムーズに動かなくなります。
日常的にストレッチをして腰と股関節の可動域を高めることが大切です。
腹筋と背筋の強化
治療の箇所でも書きましたが、腹筋と背筋を鍛えることで背骨が安定します。
適切な筋力を保つことで腰椎が正しい位置で固定され、疲労骨折の進行を防ぐことができます。
肥満の改善
もし適正体重よりも体重が多いときは、減量も予防法の一つとして効果的です。
肥満で体重が増加すると、お腹に脂肪がつきやすくなります。
お腹が重くなると骨盤は前に傾いてしまい、腰は反りやすくなってしまいます。
反り腰は腰椎分離症とすべり症を悪化させる原因となりますので、肥満解消が予防に役立ちます。
腰椎分離症・すべり症まとめ
腰椎分離症・すべり症とは、腰椎への度重なる負荷による疲労骨折が原因の腰痛です。
腰椎分離症とすべり症の症状
- 腰痛
- お尻やもも裏の痛み
- 運動で腰痛増加
- 腰の張り
- ハムストリングスの硬さ
腰椎分離症とすべり症の原因
- 腰への負担
- 腰部への衝撃・打撲
腰椎分離症とすべり症の治療
- 理学療法
- 筋トレ
- ストレッチ
- 肥満改善
- 手術
腰椎分離症とすべり症の予防
- 習慣的な運動
- 肥満の解消
- 筋トレ
- ストレッチ
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根本治療が前提の治療方針
治療で痛みを改善するのは当然ですが、痛みの根本的な原因を治療することが大切です。
身体の痛みは、痛みのある部位だけが原因とは限りません。
例えば腰椎分離症と腰椎すべり症の場合は、腰への度重なる負荷がそもそもの原因です。
痛みを治療しても、痛みの元となる原因を取り除かないことには怪我が再発してしまいます。
Lifelongの治療方針は痛みの改善だけでなく、怪我の原因を根本から改善することです。
痛みが出るたびに治療を受けるのではなく、痛くなる原因を改善して痛みが再発しない身体を目指しましょう。
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