2024.03.28
野球肘
野球肘にならない身体作りのために必要な運動とは
執筆大澤 亮(理学療法士)
有名なスポーツ整形外科で主に手術直後のリハビリを担当。病院で培った臨床技術を活かし、ジュニアアスリートから高齢者の運動愛好家まで幅広い年代のリハビリを得意とする。自身のスポーツ歴は野球、バスケ、カヌー。
野球肘を予防することは野球をするすべての年代の方にとって必要なことです。
現在肘に痛みがある方、過去に痛みが出てもう怪我をしたくない方、様々な方がいると思います。
肘の痛みは野球をする少年の約20~25%、約4~5人に1人もの割合で経験しているというデータもあります。
このページでは神戸三宮で活動する理学療法士が、野球肘に関するこのようなお悩みを解決するための情報を紹介しています。
記事の内容
- 野球肘の予防に何が大切かを知りたい
- 野球肘の予防方法を知りたい
野球肘は野球をする方にとって多くの方が悩まれている怪我です。
肘の痛みには体の柔軟性や筋力などの機能的な要因、投球数など環境的な要因に分けられます。
この記事では怪我の予防のために必要な知識、体の機能について詳しく紹介しているのでぜひご自身の怪我の予防にご利用ください。
また、野球肘について詳しく知りたい方はこちらの記事に詳しく紹介していますのでご覧ください。
野球肘の原因
野球肘の原因には体の機能的な要因と投球数などの環境的な要因に分かれます。
体の機能的な要因としては
- 柔軟性不足
- 筋力不足・偏り
- 投球フォーム不良
これらの要因が考えられます。
柔軟性の低下
投球には柔軟性が重要ですが特に重要なのが
- 肩関節周囲
- 体幹
- 股関節
これらの柔軟性が重要だと言われています。
肩関節
肩関節周囲の柔軟性の重要性は皆さんイメージしやすいかもしれません。
特に内旋可動域は痛みがある選手に多く可動域制限があります。
内旋可動域制限の原因は肩関節の後方の組織の硬さが原因とされています。
後方のタイトネスは上腕骨の位置も変えてしまうこともあるため他の障害にもつながることもあり、投球障害の代表的な要因とされています。
体幹の柔軟性
体幹の柔軟性で特に重要なのは胸郭の柔軟性と胸椎の柔軟性です。
この二つの可動域が投球動作と関係するのは胸を大きく張ることができるかという事です。
胸を張れずに投球動作を行うと、下半身からの力を上半身にうまく伝えることができずに上半身に依存した投球になり、肩や肘への負担が大きくなってしまいます。
また、体幹の柔軟性不足はパフォーマンスにも大きく影響します。
股関節の柔軟性
股関節の柔軟性は投球動作において下半身の力を伝えるために重要になります。
投球とは下半身から始まり、最後に支えるのも下半身です。
股関節の柔軟性が不足していると投球時にうまく下半身を使えずいわゆる手投げというものになってしまいます。
筋力の低下・偏り
筋力低下や筋力の偏りも投球障害の原因となります。
特に重要な筋力は股関節周囲の筋力と肩関節のインナーマッスルです。
股関節周囲の筋力が不足すると投球フォームが安定せず無理なフォームでの投球となってしまい肩や肘の負担が大きくなってしまいます。
肩関節のインナーマッスルは肩関節の安定に重要な役割があります。
インナーマッスルが弱いと関節が緩くなってしまいます。
緩い状態で投球をすると安定させるためにアウターマッスルと呼ばれる大きな筋が過剰に働きます。
このように過剰に働く状態が続けばアウターマッスルの硬さにつながりけがや痛みにつながります。
投球フォーム不良
投球フォーム不良は肩や肘に大きな負担がかかるため原因の一つとなります。
不良な投球フォームにもさまざまなタイプがあり、原因も多種多様です。
よく見られる不良投球フォーム例は
- 肘が下がった状態での投球
- 肘を前につきだした状態での投球
- 体が開いた投球
- 体重が後方に残った投球
これらがよく見られる不良な投球フォームですがほかにもさまざまな不良フォームが存在します。
このような不良フォームを発見することができても意識や練習だけで改善できるのであれば問題はありませんが機能的にこのような投げ方になっている場合は原因を解決しなければフォームの改善は難しいです。
野球肘になりにくい体のつくり方
野球肘になりにくい体を作るために重要なことは自分の体の機能を把握し、修正していくことです。
上記したように柔軟性、筋力の必要性を理解し、ストレッチやトレーニングを行うことで野球肘になるリスクを軽減することができます。
これから野球肘になりにくい体を作るためのエクササイズを紹介するのでぜひ参考にして試してください。
広背筋リリース
- ストレッチーポールの上に腕を伸ばして横向きに寝ます
- 肩甲骨の外側が当たる位置で上下に動く
前腕ストレッチ
- 手首を逆さにし、手のひらを床につける
- 身体を後ろに倒して前腕の筋肉を伸ばす
肩関節内旋
- 横向きになり、肘を90度に曲げて床につける
- 手のひらを床につけるように、逆の手で押す
大胸筋ストレッチ
- 壁や柱の横に立ち手を肩より少し上の位置で壁につける
- 反対の方向に胸を開く
広背筋ストレッチ
- 膝立ちになり両肘を台の上に置き、腕を伸ばす
- 両腕の間に頭を入れる
胸椎ローテーション
- 四つ這いになり、片手を頭の後ろに置く
- 胸を大きく開いて回し、天井を見上げる
ヒップローテーション
- 両足を腰幅より開いて座る
- 両膝を左右に倒して股関節を回旋させる
チューブ肩関節内旋運動
- 肘を90度に曲げて脇腹に固定し、バンドをつかむ
- 肘が動かないように肩を回してバンドを内側に引っ張る
チューブ肩関節外旋運動
- 肘を90度に曲げて脇腹に固定し、バンドをつかむ
- 肘が動かないように肩を回してバンドを外側に引っ張る
外転筋アクティベーション
- 膝を伸ばして横向きに寝ころびます。
- 膝を伸ばしたまま足を上に挙げます。
片足ブリッジ
- 上向きに寝ころび膝を立てて片足を伸ばす
- 立てた膝側の足で地面を押すようにお尻を浮かせる
野球選手にとって肘の痛みは多くの人が悩む怪我です。
野球肘は一度痛みを出すと何度も繰り返し痛みを出すことが多いです。
痛みを我慢しながら野球をするのではなく痛みが出ない体を作ることが大切です。
野球肘になりにくい体を作り、さらにパフォーマンス向上を目指して運動をしましょう。
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