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Case Study 症状別事例

2024.11.06

ジャンパー膝

膝前面の痛みと足の筋量の関係性

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

今回紹介する論文は”片側および両側の膝蓋大腿痛における下肢の筋肉量”というテーマです。

簡単に説明すると、膝の前面が痛い人と痛みのない人は下半身の筋量にどのような差があるのか?を調べた研究です。

一般的には膝に痛みがある人は膝周りの筋肉を鍛えるように言われることが多いと思います。

しかしこの研究によると、膝の前面に痛みがある人は両足全体の筋量が少なく、表層と深層どちらの筋量も少ないということが報告されています。

この結果を元に考えると、膝前面の痛みを改善するためには膝だけでなく、より幅広い筋肉を鍛える必要があると言えます。

それではより詳しくこの論文について解説していきます。

論文の概要

今回の研究では被験者の膝の状態によって、3つのグループに分けて比較が行われました。

  1. 片膝に痛みがあるグループ:10人
  2. 両膝に痛みがあるグループ:10人
  3. 痛みのないグループ:8人

すべての参加者に対してMRI検査を行い、下半身の筋肉量を測定しています。

そして、膝に痛みのある人とない人の筋肉量の違いについて調べました。

論文の研究結果

この研究で明らかになったことは以下の2点です。

  1. 膝蓋大腿痛の人は下半身の表層と深層の筋肉ともに、筋肉量が少なかった。
  2. 片膝にしか痛みがない人は、痛みのない膝の筋肉量も少なかった。

それぞれの研究結果についてより詳しく解説していきます。

表層と深層の筋肉量

まず一つ目が、表層と深層の筋肉量です。

一般的に、大きくて強い筋肉は表層についていて、関節を安定させる役割のある小さい筋肉は深層についています。

これまで膝蓋大腿痛の治療には、大腿四頭筋など膝周りの大きな筋肉を鍛えることが大切と考えられてきました。

しかし今回の論文では、内転筋や外旋筋などより小さな筋肉の量が少ないこともわかりました。

そして膝周りの筋肉だけでなく、股関節や臀部の筋肉量も少なかったと報告されています。

この研究結果を参考にすると、膝の前部に痛みがある人は膝周りの大きい筋肉を鍛えるだけでなく、股関節や臀部の筋肉、そして身体の深い位置についている深層筋も鍛えた方が良いと考えられます。

痛みのない膝も鍛える

2つ目の研究結果が、片膝に痛みがある人の痛くない方の足も筋肉量が少なかったということです。

これは意外な結果ですが、痛みのない方の足にも影響が出ている、もしくは痛みがない足の筋肉不足が逆側の痛みの原因になっている可能性がある、と考えることもできます。

痛みがある膝をかばって逆足ばかり使ってしまい、痛みがある膝の筋肉が衰えてしまうということは考えやすいです。

しかし今回の結果では、痛みのない足の筋量も少ないということでした。

この結果をリハビリに活用するなら、

痛みのある足だけでなく痛みのない足も同時に鍛えて、左右両側の筋量を増やすことが痛みの改善により効果的だと考えられます。

まとめ

今回紹介した論文では、膝蓋大腿痛と筋肉量の関係性について報告されています。

この研究結果が正解ということではありませんが、治りにくい膝の痛みを改善するための参考になるはずです。

膝蓋大腿痛でお困りの方は、膝だけでなく下半身全体のトレーニングと、痛みのない足も同時に鍛えることが改善へと繋がる可能性があります。

ぜひご自身のリハビリに取り入れてもらえればと思います。

膝の痛みにお悩みの方は、こちらの記事もお役に立つかと思います。

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