2024.11.29
変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療「保存療法」とは?症状を軽減し、生活の質を向上させる方法
執筆大澤 亮(理学療法士)
有名なスポーツ整形外科で主に手術直後のリハビリを担当。病院で培った臨床技術を活かし、ジュニアアスリートから高齢者の運動愛好家まで幅広い年代のリハビリを得意とする。自身のスポーツ歴は野球、バスケ、カヌー。
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで関節に炎症が生じ、痛みや動きの制限が現れる病気です。
症状が軽度から中度の場合、手術を行わずに治療を進める「保存療法」が一般的です。
この記事では、変形性膝関節症における保存療法の具体的な内容と効果、日常生活でのポイントについて詳しく解説します。
保存療法とは?
保存療法とは、手術を行わずに症状の改善や進行の抑制を目指す治療方法です。
変形性膝関節症における保存療法は、様々なアプローチを組み合わせることで、膝の痛みを軽減し、日常生活を快適にすることを目的としています。
- 薬物療法
- 運動療法
- 物理療法
- 装具療法
- 体重管理
これらの保存療法を行うことで痛みや動作の改善が期待できます。
薬物療法
薬物療法は痛みや炎症を抑えるための基本的な治療法です。
- 鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)
- ヒアルロン酸注射
- ステロイド注射
主にこれらの薬が使用されます。
鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)
痛みや腫れを軽減するために処方されます。
ただし、長期間の使用は胃腸障害や腎機能低下などの副作用があるため、医師の指示に従って使用することが重要です。
ヒアルロン酸注射
膝関節内に直接注射することで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減します。
ヒアルロン酸は関節液の主成分で、関節のクッションの役割を果たします。
ステロイド注射
炎症が強い場合には、短期間のステロイド注射が行われることがあります。
ただし、頻繁な使用は関節の損傷を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
運動療法
運動療法は膝周りの筋肉を強化し、関節への負担を軽減する治療法です。
- 筋力の強化
- ストレッチ
- 水中運動
運動療法では、これらの運動が推奨されています。
筋力の強化
太ももの周りにある筋肉を鍛えることで、膝関節を支える力を高めます。
膝関節の安定性が高まることで膝関節の痛みの軽減・進行の抑制が期待できます。
エアロバイクや筋力トレーニングを行うことが効果的です。
※運動方法・強度に注意しましょう。
おすすめの運動についてより詳しくしおりたい方はこち他の記事をご覧ください。
>> 変形性膝関節症の方が避けるべき「してはいけない運動」とは?
ストレッチ
変形性膝関節症が進行していくと可動域が低下してしまいます。
膝周りの筋肉や関節の柔軟性を保つために、ストレッチが重要です。
特に太ももやふくらはぎの筋肉を伸ばすことで、関節の動きを改善します。
水中運動
水中で行う運動は膝への負担が少なく、筋力を効果的に鍛えることができます。
物理療法
物理療法は、様々な機器や方法を使って痛みを和らげたり、血流を促進したりする治療法です。
物理療法だけでは関節の回復は難しいですが、その他の保存療法と併用することで効果が増加することや痛みを和らげることが期待できます。
- 温熱療法
- 低周波治療
- 超音波治療
物理療法ではこれらの方法が選択されます。
温熱療法
膝を温めることで血行を良くし、痛みや硬さを緩和します。
入浴やホットパックの使用も効果的です。
低周波治療
低周波電流を用いて筋肉を刺激し、痛みを軽減します。
超音波治療
超音波を使って組織を温め、血流の促進、疼痛の緩和を促します。
装具療法
膝への負担を軽減するために、装具を使用することも保存療法の一環です。
- 膝サポーター
- インソール
これらの装具を用いて、膝関節への負担軽減を行います。
膝サポーター
膝を安定させ、関節の動きをサポートします。
症状に合わせて適切な種類のサポーターを選ぶことが重要です。
インソール
足のアライメントを調整し、膝への負担を軽減します。
体重管理
体重が増えると膝への負担が大きくなります。
1kgの体重増加は膝に約3kgの負荷をかけるとされており、適正体重を維持することが大切です。
バランスの取れた食事や適度な運動で体重を管理することが、症状の進行を抑える鍵となります。
保存療法を続けるポイント
保存療法は継続することがとても重要になります。
保存療法を続ける上で重要なポイントがいくつかあります。
- 医師・専門家の指導に従う
- 痛みを感じたら休む
- 日常生活で膝を守る工夫をする
これらのポイントが重要になります。
医師・専門家の指導に従う
自己判断で運動や薬を変更するのは避け、定期的に医師・専門家の指導を受けましょう。
痛みを感じたら休む
無理をして痛みが悪化すると、治療が長引く原因になります。
痛みが強いときは休息をすることも重要です。
日常生活で膝を守る工夫をする
階段の利用を控える、膝を深く曲げる動作を避けるなど、膝への負担を減らす工夫を心がけましょう。
まとめ
変形性膝関節症の保存療法は、痛みを軽減し、症状の進行を防ぐための重要なアプローチです。
薬物療法や運動療法、物理療法を組み合わせることで、膝の状態を改善し、日常生活を快適にすることが可能です。
医師・専門家の指導のもと、適切な治療法を取り入れながら、自分のペースで症状に向き合いましょう。
定期的なケアを続けることで、膝の健康を守り、生活の質を向上させることができます。
また、手術を検討されている方も一度「保存療法」を試してみることで手術までの時間を延ばせたり、手術を避けることができるかもしれません。
変形性膝関節症についてより詳しく知りたい方は、こちらも参考ください。
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