2021.06.26
足首の捻挫
“歩けるけど痛い捻挫”って大丈夫なの?
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
足首の捻挫はスポーツで1番多く見られる怪我です。
そのため「捻挫しても歩けるなら大丈夫だろう」と思われがちですが、捻挫を甘く見るのは非常に危険です。
捻挫をしてすぐに歩けたとしても、最悪の場合は骨折していることだってあります。
この記事では、捻挫をした後もなぜ歩けるのか?運動してもいいのか?または病院に行ったほうがいいのか?を解説しています。
記事の内容
- 捻挫しても歩けるっていいこと?
- 捻挫しても歩けるなら運動してもいい?
- 捻挫して歩けても病院に行ったほうがいい?
目次
捻挫をしても歩けるのはいいこと?
まず捻挫をした直後に歩けるということは“酷すぎる状態ではない”ということがわかります。
もし大怪我をしていた場合は、足首に体重をかけることができないので歩くことができません。
少なくとも重症である可能性は低いということがわかります。
骨折の可能性は低い
先ほども言いましたが、足首を骨折していると歩くことができない人がほとんどです。
痛くても歩けるだけで、骨折の可能性はかなり低くなります。
捻挫をしたときに、その場で骨折の確認ができるオタワアンクルルールという検査方法があります。
これは捻挫した直後にその場で何に道具も使わずに行うことができるテストです。
オタワアンクルルールの検査には”捻挫した直後に体重をかけて4歩、歩くことができるか?”という項目があります。
怪我した直後に4歩以上歩くことができる場合は、足首を骨折している可能性は低いと考えることができます。
痛いけど歩ける=骨折していない、ではない
捻挫した直後に歩けると骨折の可能性は低いですが、”骨折していない”と断言することはできません。
オタワアンクルルールはあくまで簡易的なテストなので、本当に骨折していないかの確認はレントゲン検査を受けなければわかりません。
実際に私が治療した選手の中には、歩いたりジャンプをしても痛くなかったのに、レントゲンを撮ったら骨折していたというケースもありました。
捻挫直後に歩けるからといって、骨折の疑いが100%なくなるわけではないことに注意しましょう。
捻挫しても歩けるのはどこを怪我している可能性がある?
捻挫をして痛くて歩けない場合は重度の靭帯損傷や骨折が考えられますが、痛くても歩ける場合はどのような怪我の可能性があるのでしょうか?
歩けると言っても歩くと痛みを感じるということは、足首のどこかが損傷している証拠です。
”歩けないほど痛くはないけど、歩くと痛い”という症状のときに考えられる怪我を紹介します。
軽度か中度の靭帯損傷
足首をひねると靭帯を損傷することがほとんどですが、靭帯損傷は重症度によって軽度から重度に分類されます。
軽度(1度損傷):靭帯の軽度損傷
中度(2度損傷):靭帯の部分断裂
重度(3度損傷):靭帯の完全断裂
靭帯が完全に切れてしまう重度の靭帯損傷の場合は、体重をかけると激痛を感じるので歩くことは難しいです。
痛くても歩けるということは、靭帯を損傷していても軽度か中度の怪我である可能性が高くなります。
骨打撲・骨挫傷
骨打撲や骨挫傷は骨同士がぶつかることで、骨の内部で炎症が起こる怪我です。
捻挫で足をひねったときは、通常の足首の可動域を超えて関節が動きすぎてしまうことがあります。
可動域を超えて関節が動いてしまうと、骨同士がぶつかってしまうことがあります。
このとき勢いが強すぎると、ぶつかった衝撃で骨が傷つき、腫れてしまうことで骨挫傷(骨打撲)になってしまいます。
骨挫傷は体重をかけると痛みを感じますが、歩けなくなるほどの痛みが出ることは少ないです。
足首の剥離骨折
「捻挫直後に歩けるなら骨折の可能性は少ない」と言いましたが、剥離骨折の場合は歩くことができます。
剥離骨折を簡単に説明すると”剥がれる骨折”です。
一般的に骨折と呼ばれるものは、骨が折れたりヒビが入る怪我をイメージされると思います。
剥離骨折はそのような骨折とは少し違い、骨についている靭帯が靭帯の付着部分ごと骨から剥がれる骨折です。
なので、一般的な骨折に比べると痛みや症状は軽くなりやすいので、骨折していても歩けることが多いです。
実際に多くの医療関係者から”軽度の捻挫”と言われたサッカー選手が、実は剥離骨折をしていたというケースがありましたので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
>> 【実体験】捻挫だと思ったら剥離骨折だった!誰も気づかなかった子供の足首骨折を見つけた方法
捻挫しても歩けるなら運動して大丈夫?
痛いけど歩けるからといって、痛みを我慢しながら運動やスポーツを行うのはやめましょう。
例え歩けたり走れたりしても、痛みがあるということはどこかの組織が損傷しているという証拠です。
一昔前は「捻挫くらいで休むな」と言われていたかもしれませんが、痛みを我慢して運動することで症状が悪化したり、回復を遅らせる危険性があります。
症状の悪化
痛みを我慢しながら運動することで、症状が悪化してしまう可能性があります。
捻挫した直後に歩けたとしても、足首の靭帯には多少なりとも損傷があるはずです。
損傷した靭帯は正常な靭帯に比べて弱くなっているので、足首は不安定になり捻挫を再発するリスクが高くなります。
靭帯が完治する前に再び捻挫してしまうと、損傷している靭帯はより重症化してしまいます。
1週間で治るはずだった軽度の怪我が、全治2ヶ月の重症になってしまうこともあるので、歩けるからといって足の痛みを我慢して運動するのはやめましょう。
怪我の回復が遅れる
捻挫をして靭帯を損傷したとき、傷ついた組織を治すために炎症反応が起こります。
怪我をして痛みのある部分が腫れるのはこのためです。
損傷した靭帯が治る前に運動してしまうと、血流が増加して腫れが必要以上に大きくなってしまい、靭帯の治りが遅くなります。
捻挫した後は腫れが治るまでは強度の高い運動を控え、靭帯の修復に専念しましょう。
捻挫して歩けるけど病院には行ったほうがいい?
捻挫した後も「歩けるから病院に行かなくて大丈夫」と考える人がいると思います。
しかし、ひどい捻挫をしたときは骨折している可能性もあります。
”捻挫をしたけど痛みを我慢すれば歩ける”というときも、骨に圧痛のあるときや、足首に体重を乗せられないときは病院に行くようにしましょう。
足首の骨に圧痛がある
足首の骨に圧痛があるかどうかは、オタワアンクルルールで確認する内容です。
上のイラストにあるAからDの部分を触って痛みがあるようなら、骨折している可能性もあるので病院に行くことをおすすめします。
A. 外果(外くるぶし)の後部下から6cm
B. 内果(内くるぶし)の後部下から6cm
C. 第5中足骨基部(小指の外側)
D. 舟状骨
足首に体重をかけられない
捻挫した足首に、100%で体重をかけられない場合も病院に行くようにしましょう。
確認方法としては、片足立ちが最適です。
怪我した足で片足立ちができるか?片足でスクワットができるか?をチェックしましょう。
骨折や靭帯の完全断裂がみられるときは、片足立ちができないことがほとんどです。
心配なら必ず専門家に相談を
捻挫は軽い怪我ですぐに治るという考えは過去の話です。
捻挫も正しい治療とリハビリを受けなければ、後遺症を残してしまう恐れのある立派な怪我です。
「痛いけど歩けるから大丈夫」と自分で判断するのではなく、少しでも不安があれば専門家に相談するようにしましょう。
捻挫を正しく治療しなかったために、不安定な足首で運動しなければいけないプロスポーツ選手を多く見てきました。
たかが捻挫と簡単に考えず、一つの怪我としてしっかり治療を受けるようにしましょう。
まとめ
”捻挫をして、歩けるけど痛い”という場合は、以下の情報を参考にしましょう。
- 骨折の可能性は低い
- 軽度〜中度の靭帯損傷の可能性
- 剥離骨折の可能性はある
- 痛いうちは運動しないように
- 骨の圧痛や片足立ちができないときは病院へ
- 不安なときは必ず専門家に相談する
歩けるからといって軽い怪我と思わず、正しい判断をしてください。
足首捻挫の治療法など、捻挫についてより詳しい情報はこちらのページにまとめています。
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