2022.04.06
足首の捻挫
足首捻挫のリハビリテーション
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
足首を捻挫したあとは、治療だけでなくリハビリを行うことがとても重要です。
正しいリハビリを受けないと足関節がゆるくなってしまい、捻挫グセや後遺症が残りやすくなります。
この記事ではプロのスポーツトレーナーが、足首を捻挫したときに最適なリハビリのメニューを、リハビリを行う意味や目的も合わせて紹介しています。
最後まで読むとこのようなお悩みを解決することができます。
記事の内容
- 足首捻挫のリハビリメニューを知りたい
- 足首を捻挫したときになぜリハビリが必要か知りたい
「捻挫は休まなくていい怪我」と言われることもありますが、これは大きな間違いです。
捻挫を正しくリハビリしなければ、足首の状態は元に戻りません。
可動域や筋力の低下をそのままにしていると、再び捻挫をしてしまうリスクも上がってしまいます。
正しいリハビリを受けて完全に元の状態に戻した上で、スポーツに復帰するようにしましょう。
「ますは足首の捻挫について詳しく知りたい」という人はこちらを最初にご覧ください。
リハビリとは?
リハビリとは”リハビリテーション”の略称で、最も大切な役割は「怪我をする前の状態に戻す」ということです。
例えば足首の捻挫によって歩くときに痛みを感じている人は、リハビリを通じて痛みなく歩けるようになることが目標になります。
もしスポーツ選手が捻挫で足首を痛めてしまったときは、痛みなく動けるようになって競技に復帰することがリハビリのゴールになります。
怪我をした人によってリハビリの目標地点は違いますが、リハビリは痛みを減らすだけでなく元の生活や活動レベルに戻すために行います。
足首捻挫リハビリの効果
なぜ足首を捻挫した後はリハビリをしなければいけないのでしょうか?
痛みさえなくなったらリハビリはしなくてもいいと考える人がいますが、後に捻挫グセや後遺症に悩む人も少なくありません。
捻挫をしたあとにリハビリを行うことで、主に3つのメリットがあります。
- 損傷した組織の回復を促す
- 腫れを治す
- 再発予防
損傷した組織の回復を促す
捻挫をしたら安静にすることが大切と思う人もいるかと思いますが、現代の医学では積極的な運動を勧めています。
痛みのない範囲で足首を動かすことで、足関節の拘縮を防ぎ、捻挫を早く治すことができます。
特に捻挫で損傷した靭帯は、適度にストレッチのように引っ張られる刺激を与えることで、より整った状態で治ると報告されています。
腫れを治す
捻挫をすると足首が腫れてしまいますが、足首周りの筋肉を動かすことで腫れを早く引かせることができます。
筋肉は収縮すると、筋肉内の血液を送り出すポンプのような機能を持っています。
ふくらはぎや足首周辺の筋肉を使うと、足首の腫れをいち早く体内に吸収して腫れを軽減してくれます。
再発予防
多くの場合、捻挫をすると足首の靭帯が少しゆるくなってしまいます。
リハビリで靭帯を正しく修復せずに普段の生活に戻ると、不安定な足首は再び捻挫をしてしまう可能性が非常に高いです。
リハビリで足首の筋力やバランス能力を元に戻すことで、捻挫の再発を予防することができます。
足首捻挫をリハビリするときの注意点
足首を捻挫した後のリハビリでは、2つの注意点に気をつけてください。
痛みを我慢しない
リハビリ中に痛みを感じたときは、運動を中止してください。
リハビリのトレーニングは足首の状態に合わせて段階的にすすめる必要があります。
運動中に痛みを感じるということは、足首の状態に対して運動強度が高すぎる可能性があります。
痛みを我慢して無理に動かさずに、少し強度の低い運動を行って足首の状態が回復してから、少しずつ運動強度を上げるようにしましょう。
腫れるまでやらない
リハビリ中に痛みを感じなくても、運動後や翌日に足首が腫れてしまうことがあります。
トレーニング後に腫れてしまうということも、運動の強度が高すぎるということです。
リハビリ後も腫れない強度の運動から段階的に進めるようにしましょう。
足首捻挫をリハビリするときの目的
足関節捻挫のリハビリを行うときは、主にこの3つの目標を改善するための運動を行います。
- 関節可動域
- 筋力
- バランス能力
関節可動域
捻挫をしたあとは腫れや痛みによって関節が硬くなり、可動域が低下してしまいます。
リハビリで関節可動域を元に戻さなければ、少しの運動で足首に痛みを感じたり、足首の前方に詰まり感が残ってしまうことがあります。
筋力
足首を捻挫したあとは、足首周辺の筋力低下がよく見られます。
低下した筋力は筋トレをすることで再び元の筋力に戻すことができます。
足首の筋力は足関節の安定性に大きく影響を与えるので、しっかり鍛え直すことが大切です。
バランス能力
人間の関節には”感覚受容器”と呼ばれるセンサーのようなものがあります。
このセンサーは関節の感知能力に関わっていて、バランス能力などに影響します。
捻挫で関節を痛めると、この感覚受容器も機能が下がってしまい、特に足首捻挫ではバランス能力が大きく低下してしまいます。
バランス感覚向上は捻挫の再発予防にも効果的なので、忘れずにリハビリするようにしましょう。
足首捻挫のリハビリ
それでは実際に足首捻挫に使えるリハビリメニューを紹介します。
段階的なリハビリができるように、メニューを3段階に分けました。
捻挫をしてからの日数や回復状況に合わせて、痛みのでない運動を行うようにしてください。
捻挫初期段階のリハビリ
捻挫をした直後の約3日間は急性期と呼ばれます。
この期間は痛みが強く、腫れも大きいですが、痛みのない範囲で足首をリハビリすることが大切です。
痛いからといって動かさず安静にしていると、傷ついた組織の修復が遅れてしまいます。
初期の可動域訓練
アルファベット
AからZまで:1日3回
足首を宙に浮かせた状態で椅子に座ります。
つま先でAからZまで順番にアルファベットの文字を書くように足首を動かすことで、足関節の可動域訓練になります。
小さい子供にはひらがなを書く方がわかりやすいです。
初期の筋力トレーニング
足関節のアイソメトリック運動
10回 x 3セット:1日3回
アイソメトリックとは筋肉の働き方の一つで、”筋肉の長さが変わらずに収縮する”ことを言います。
筋肉は力を出しているけど関節は動かない、という運動方法なので、捻挫した直後でも痛みなく行うことができます。
壁に向かって足首を付け、壁を押すように力を入れることで、関節を動かさずに筋トレを行うことができます。
初期のバランストレーニング
片足立ち
5秒保持 x 10回:1日2回
地面に片足で立ちバランスを取る、という非常にシンプルなリハビリです。
慣れてきたら両目を閉じて挑戦してみましょう。
捻挫中期段階のリハビリ
怪我から4日ほど経つと急性期から亜急性期という段階に移ります。
徐々に痛みと腫れが引いて足首が動かしやすくなってきます。
ここで無理をしないことが重要で、痛みがでない運動を続けながら、少しずつ運動強度をあげていきましょう。
中期の可動域訓練
アキレス腱ストレッチ
30秒 x 3セット:1日3回
捻挫した方の足首を後ろにしてアキレス腱のストレッチをしましょう。
このとき静止するのではなく、身体を前後に軽く動かすことで、足首の可動域を広げる運動になります。
中期の筋力トレーニング
足首のチューブ運動
10回 x 4方向 x 3セット:1日2回
輪っか状のゴムバンドを足首にかけて、足関節の筋トレを行います。
足首は背屈、底屈、外反、内反方向に動くので、この4方向に抵抗がかかるようにゴムバンドをかけましょう。
中期のバランストレーニング
タオルの上で片足立ち
5秒保持 x 10回:1日2回
先に紹介した片足立ちのバランストレーニングを折り畳んだタオルの上で行います。
硬い地面とは違い、柔らかいタオルの上ではバランスを保つのが難しくなります。
捻挫後期段階のリハビリ
個人差はありますが、捻挫をしてから2週間ぐらいで痛みなく歩くことができる人が多いです。
「痛みがなくなったから治った」とリハビリを辞めてしまわずに、元の筋力やバランス能力にしっかり戻すことが再発予防につながります。
後期の可動域訓練
カーフレイズ
10回 x 3セット:1日3回
台や階段につま先を乗せ、踵が浮くようにします。
ここからつま先立ちになるよう踵を上げ、元の位置に戻します。
足関節を大きく動かしながら、ふくらはぎの筋肉も鍛えることができます。
後期の筋力トレーニング
スクワット
10回 x 3セット:1日3回
両手を胸の前で組み、腰を落とします。
太ももが地面と平行になるまで下がったら、元の位置に戻ります。
お尻を後ろに突き出すように降りると、上手にスクワットをすることができます。
後期のバランストレーニング
不安定な場所で片足立ち
5秒保持 x 10回:1日3回
リハビリ後期段階では、足首の筋力も上がりバランスもかなり向上しています。
今までよりも不安定な場所で片足立ちをして、より難しいバランストレーニングに挑戦しましょう。
下の写真ではそれぞれBOSU、バランスクッションというトレーニング道具の上でバランス訓練をしています。
スポーツ復帰に向けた捻挫のリハビリ
先に紹介した捻挫のリハビリは、日常生活に戻るために最低限必要なメニューです。
スポーツ復帰を目標としたリハビリを行う場合は、自分のスポーツに合わせた動きのリハビリが必要となります。
スポーツ選手がリハビリしなければいけない動きにはこのようなものがあります。
- サイドステップ
- ジャンプ
- 切り返し
- スプリント
私がリハビリを担当したサッカー選手が実際に行っていた、競技復帰前のリハビリメニューを紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
- 足関節モビリゼーション
- ふくらはぎのストレッチ
- 股関節のストレッチ
- タオルギャザー
- 足首チューブ4方向
- BOSU片足立ち
- スクワット
- ランジ、サイドランジ
- ステップアップ
- ジョギング
- スプリント
- サイドステップ
- ジグザグドリブル
- ヘディングジャンプ
- スプリント→切り返し
- ミラードリル
- 対人ディフェンス
- 対人オフェンス
足首の痛みを感じなくなったからと言って、すぐに競技復帰するのは非常に危険です。
スポーツ特有の動きや強度の高い運動をしても足首に痛みを感じないことを確認した上で、安全に復帰するようにしましょう。
中途半端な回復状態でスポーツを再開してしまうと、捻挫の再発リスクや後遺症が残る可能性が高くなってしまいます。
怪我をしたときは無理をせず、しっかりと治しきってから復帰することが結果的に最速の競技復帰になるはずです。
足首捻挫から競技復帰するために確認すべき項目はこちらの記事で紹介しています。
まとめ
足首を捻挫したときはリハビリに取り組むことで、傷ついた組織や筋力は正常な状態まで回復します。
痛みがなくなったからと言ってリハビリをせずに競技復帰してしまうと、捻挫グセや後遺症が残ってしまうかもしれません。
特にスポーツ選手は自分の競技に合わせたリハビリを受けることで、より安全に競技復帰することができます。
たかが捻挫を思わずに、最後まで正しく治してください。
足首の捻挫に関してより詳しく知りたい人は、こちらのページに情報をまとめてあります。
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