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Case Study 症状別事例

2022.10.31

前十字靭帯損傷

前十字靭帯再建手術前に行うリハビリトレーニング

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

前十字靭帯を損傷してから再建手術を受けるまでの間に、膝のリハビリを行って少しでも筋力と関節可動域を改善させることが大切です。

膝の筋力と可動域を手術前から向上させることで、手術後の回復が早まり、リハビリをスムーズに進めることができます。

この記事では、前十字靭帯再建手術前にリハビリを行う目的と、手術までに行うべき5種類のリハビリを紹介しています。

前十字靭帯を損傷し、これから手術を受ける人にとって役に立つ内容となっています。

前十字靭帯断裂のリハビリを成功させるために重要な内容なので、ぜひ目を通してみてください。

まずは前十字靭帯損傷に関してより詳しく知りたい、という人はこちらの記事をご覧ください。

前十字靭帯再建手術前にリハビリする理由

前十字靭帯を損傷して再建手術を受けた後は、リハビリをすることで膝の機能が回復します。

それではなぜ手術前にもリハビリを行うのでしょうか?

それは、前十字靭帯再建手術前に膝の筋力と関節可動域できる限り治すことで、手術後のリハビリがスムーズに進んで回復が早くなるからです。

下半身の筋力強化

前十字靭帯の再建手術を受けた後は、膝を中心とした下半身の筋力が大きく低下します。

特に新しい前十字靭帯のために腱が使われるハムストリングスや大腿四頭筋は著しい筋力低下が見られます。

手術の前からトレーニングに取り組むことで、少しでも筋力を高め、再建手術後の筋力低下を最低限に抑えることができます。

膝まわりの筋肉を中心に、関節に負担がかからないようにリハビリしましょう。

ます。

リハビリで鍛えるべき筋肉
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス
  • 大臀筋
  • 中臀筋
  • 内転筋
  • 腓腹筋

膝関節可動域の改善

前十字靭帯を損傷した直後は膝が硬くて動かなくなります。

痛みと腫れが引くにつれて少しずつ動かせるようになってきますが、自然に元の可動域へと戻ることはありません。

前十字靭帯再建手術を受けた後も、同じように膝関節が硬くなってしまいます。

しかし、手術前にできるだけ関節可動域を改善しておくことで、手術後の関節可動域の回復が早くなります。

手術後に膝関節可動域を元に戻すことは、前十字靭帯のリハビリで最初の目標となります。

少しでも早い段階で可動域を回復させるためにも、手術前から可動域訓練に取り組むことが大切です。

再建手術前に行うべきリハビリメニュー

それでは前十字靭帯の再建手術前に行うことができるリハビリを5つ紹介します。

関節可動域訓練を2種目と筋トレを3種目選んだので、無理のない範囲で取り組んでみてください。

ヒールプロップ

膝関節の伸展可動域訓練です。

ストレッチポールやグリッドの上に足を伸ばして置きます。

自分の両手でお皿の少し上あたりの太ももをつかみ、膝を伸ばすようにした方向に押します。

あまり強く押しすぎないように、痛みが出る直前で止めてください。

10回×3セット

ヒールスライド

膝を伸ばした状態で座り、足裏にゴムバンドやバスタオルをかけます。

ゴムバンドを引っ張りながら膝を曲げ、自力で曲げきったあとにバンドを引っ張ってより深く曲げるようにします。

これも強い痛みを感じない範囲で大きく膝を曲げるようにしましょう。

10回×3セット

お皿セッティング

大腿四頭筋の一つである内側広筋の筋トレです。

膝を伸ばして座り、膝の下にタオルを丸めて置きます。

膝下のタオルを押しつぶすように力を入れて膝を伸ばします。

特にお皿の上部内側あたりの筋肉を使う意識で行いましょう。

10回×3セット

SLR(ストレートレッグレイズ)

大腿四頭筋のトレーニング。

膝を伸ばしたまま足を高く上げる。

膝が曲がってしまわないように、力を入れながら上げましょう。

20回×3セット

ブリッジ

大臀筋とハムストリングスのトレーニング。

膝を立てて仰向けになり、お尻を高く上げます。

股関節を伸ばし切りましょう。

15回×3セット

前十字靭帯再建手術前リハビリの注意点

手術を受ける前にリハビリを行うことで術後の回復が早くなりますが、気をつけなければいけないポイントもあります。

膝に負担をかけすぎない

前十字靭帯が断裂している状態の膝はとても不安定です。

特に脛骨は前方にずれやすく、回旋の動きにも弱くなっています。

あまりに強度の高いトレーニングをしてしまうと、膝が崩れてしまい、軟骨や半月板など他の組織を痛める原因となってしまいます。

再建手術前のリハビリを行うときは、膝に負担のかかり過ぎないトレーニングを選びましょう。

膝が腫れないように

前十字靭帯を断裂してからすぐに手術を行わないのは、膝の腫れを引かせる目的があります。

そのため、受傷直後から膝を動かしすぎてしまうと、膝の腫れがいつまでも残ってしまい、手術に悪影響を起こします。

あまり早い段階から膝を動かしすぎず、腫れを引かせることを最優先にしましょう。

自分一人で判断しない

前十字靭帯再建手術前のリハビリをする際は、できるだけ専門家のアドバイスを受けましょう。

靭帯が断裂した状態の膝には、安全な動きとやってはいけない動きがあります。

また一人一人膝の状態は違うので、自分の身体に合ったトレーニングが安全に行えるように専門家の意見を聞きましょう。

特にリハビリの強度を上げたいときは、自分一人で判断しない方が安心です。

スポーツ選手は競技に合わせたリハビリを

前十字靭帯の再建手術前は、できるだけ筋力を上げたほうが競技復帰も早くなります。

なので、リハビリでは筋肉痛が起きるぐらいしっかりと負荷をかけるのが理想的です。

そして、スポーツ選手が手術前リハビリを行うときは、上記で紹介した基礎的なトレーニングだけでなく、競技特性に合わせたリハビリを行いましょう。

膝まわりの基本的な筋力に加えて、それぞれの競技に必要な動きで筋肉を鍛えることが大切です。

サッカー選手ならサッカー、バスケ選手ならバスケに近い動きでリハビリを行うことで、再建手術後のリハビリにおける回復スピードに大きな違いが出ます。

膝に負担をかけない範囲で、できるだけ競技特性に合った強度の高いトレーニングを行いましょう。

まとめ

  • 前十字靭帯再建手術前に行うリハビリの目的は、筋力強化と可動域の改善
  • 手術前に膝の状態を良くしておくことで、手術後の治りが早くなりやすい

前十字靭帯を損傷して手術を待っている人は、安全に行える範囲で手術前リハビリに取り組むようにしましょう。

再建手術後のリハビリ経過に影響を与えるので、少しでも良い状態の膝で手術に挑めるよう準備しておくことが大切です。

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