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Case Study 症状別事例

2024.05.28

インタビュー

『歩くのもやっとの状態から、再び愛犬と山に登れるように』前十字靭帯再建手術後のリハビリの感想

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

Mさんは前十字靭帯再建手術後のリハビリでご相談に来られました。

事故で前十字靭帯を断裂し、手術を受けてから2ヶ月間病院に通院してリハビリを受けていましたが、まだ足を引きづりながら歩いているという状態でした。

膝の状態も順調とは言えませんでしたが、手術後から臀部に激痛を感じるようになったことに、とてもお困りでした。

ここで大きな問題となっていたのが国民健康保険の制度です。

Mさんは前十字靭帯断裂のリハビリで病院に通っていたため、膝とは違う部位となる臀部の痛みに対する治療を受けることができませんでした。

そもそもの怪我は膝でしたが、臀部の強い痛みによって膝のリハビリがうまく進められない。しかし、臀部の怪我で病院に通っているわけではないのでその痛みに対する治療は受けられないという悪循環に陥っていました。

そのため、Lifelongでは遅れている膝のリハビリだけでなく、お尻の痛みを改善するための運動療法も取り入れました。

最初は膝を伸ばそうとするとお尻に激痛を感じていましたが、徐々にお尻の痛みが軽減されると膝が伸びるようになり、同時に膝がより伸びるようになるとお尻の痛みも軽減していきました。

運動療法を開始して2週間ほどで歩行時の痛みはかなり軽減し、以前よりも不自由なく歩けるようになりました。

その後も膝と臀部の痛みは改善し続け、愛犬の大型犬と一緒に山道を散歩できるまで回復することができたMさんに運動療法の感想をお話しいただきました。

Mさん

  • 前十字靭帯断裂再建手術
  • 病院でリハビリするも2ヶ月経っても満足に歩けない
  • 手術後から臀部に激痛を感じるも病院では治療を受けられない
  • 愛犬が大型犬のため、早く筋力をつけて散歩に連れて行きたい

Lifelongの利用目的

散歩中に転倒した際に前十字靭帯を切ってしまい、その後再建手術をしてリハビリ目的で通わせていただいてます。
中尾 優作
中尾 優作
Mさんは前十字靭帯再建手術後のリハビリでLifelongを利用いただいています。
病院でのリハビリは順調とはいかず、術後2ヶ月経っても満足に歩けない状態でした。
整形外科でのリハビリを継続しながら、当店でも運動療法を用いてより良い状態に改善できるようにサポートさせていただきました。

Lifelongを選んだ理由

膝のリハビリで病院に通ってたんですけれども、私の場合、坐骨神経痛のようにお尻の痛みがあって思うようにリハビリが進ませんでした。
なのでお尻の痛みのコントロールをしながら膝のトレーニングが出来るこちらに通わせていただいてます。
中尾 優作
中尾 優作
Mさんは手術直後から膝の痛みと共に臀部にも痛みがありました。
どちらかと言うと臀部の痛みの方が強く、この痛みが歩行や日常動作を困難にしている状況でした。
しかし前十字靭帯のリハビリで通っている病院では、健康保険制度の問題でお尻の治療を受けることはできていませんでした。
そのためLifelongでは膝のリハビリだけでなく、臀部の痛みも同時に改善できるようなリハビリメニューを考えるようにしました。

運動療法の感想

今私が日常生活で困っていることを、トレーニング中の会話の中から汲み取っていただいて、リハビリのメニューを考えていただけたことがすごく嬉しかったです。
中尾 優作
中尾 優作
手術後は身体の状態が日によって変化することが多いです。
ある日は膝が痛く、別の日は臀部が痛いなど、原因のわからない痛みの発現は良く起こってしまいます。
当店ではその変化を無視して同じリハビリを行うのではなく、その日の身体の状態に合わせて柔軟にメニューを変更することが、最も効果的なリハビリだと考えています。
また、人によってリハビリのゴールは違います。
Mさんは”正座ができるようになりたい””小さな段差で躓いてしまう””愛犬と一緒に山道を散歩したい”といった目標がありました。
その目標を達成するためには、その動作の練習が必要です。
リハビリメニューを作成する際には、その方が何を目指してリハビリに取り組んでいるか?を考えることが重要です。

日常生活での変化

ここに通い始めた頃は歩くのもやっとの状態でした。
なので小さな障害物に足が引っかかったり、椅子からの立ち上がりができなかったんですけれども、一つ一つできるようになった、”できた”という実感が持てたことがすごく嬉しかったです。
私は大型犬を飼っているのですが、怪我をする前は往復5キロの道のりを歩いてコーヒー豆などを買いによく行っていました。
”また行きたいな”とは思っていたのですけれども、歩いている途中で足が突っ張ったりして歩けなくなることがあったのでなかなか行けませんでした。
こちらで「そういった時はこうしたら歩けるようになるよ」ということをアドバイスしていただけたので、思い切ってコーヒー豆を買いに行く事ができたので、それがすごく自信に繋がりました。
中尾 優作
中尾 優作
Mさんは手術後2ヶ月経ってからご来店されたので、最初の時点で膝はかなり硬く、可動域制限が大きかったです。
そのため、膝の状態が改善するまでに少し時間がかかってしまいましたが、辛抱強くリハビリに励んでいただいたおかげで、かなり状態を回復させることができました。
大型犬の散歩を再開されるときはとても不安に感じられていましたが、重いものを引っ張る動作や、逆に引っ張られないように耐える動作などをリハビリに組み込むことで徐々に不安が軽減されたようで、無事に愛犬と散歩できるようにもなりました。
まだ膝が完全に元の状態に戻ったとは言えませんが、少しずつ元の日常に戻られていく姿を見て私も嬉しく感じています。

前十字靭帯再建手術後のリハビリ方法

Mさんは前十字靭帯再建手術を受けてから2ヶ月経っても膝関節の可動域制限が残っていました。

本来は1ヶ月以内に膝を完全に伸ばし切れるのが理想ですが、角度にして10度ほど足りていませんでした。

また、病院のリハビリでスクワットをしていたようですが、太ももの前ばかり使ってしまい、膝の前面に痛みも出ていました。

そして太ももの裏にある筋肉はいつまで経っても強くならないので、スクワットでお尻を下げることができず、膝への負担が増えるという悪循環に陥っていました。

Lifelongではまず最初に膝ではなく股関節を使ってスクワットをすることを覚えていただき、太ももの前ではなく裏側を使うコツを学んでいただきました。

すると太もも前面の張りと緊張は軽減し、膝の痛みも改善していきました。

また、臀部の痛みに関しても膝の伸ばしにくさが影響しているようでした。

膝が伸び切らないので、代わりに股関節を必要以上に伸ばしていまい、それが坐骨神経を圧迫して臀部の痛みを引き起こしているようでした。

この臀部の痛みに対しても、膝を伸ばす可動域を増やすことと同時に、腹筋を鍛えて反り腰を改善することで坐骨神経へのストレスを軽減することで改善が見られました。

具体的な解説

2ヶ月以上の膝関節伸展可動域制限によって、関節周囲の軟部組織が拘縮。

内側広筋斜角繊維(VMO)の収縮が起こらないので膝蓋骨の動きも悪化。

そして大腿四頭筋優位の運動フォームによってよりストレスがかかり、膝の前面に痛みが発生。

これは前十字靭帯再建手術とは無関係の痛みと判断しました。

臀部の痛みは膝関節伸展制限によって股関節進展の代償動作が起こり、元々反り腰で骨盤前傾位だった姿勢も相まって坐骨神経への圧迫ストレスが増加したことが原因と判断。

膝関節進展可動域と腹筋群筋力の改善によって痛みは軽減しました。

Lifelongでは以下のポイントに焦点を当てた運動療法に取り組んでいただきました。

  • 膝関節可動域制限の改善
  • お皿の動き改善
  • 大腿四頭筋の緊張軽減
  • ハムストリングスの使い方を練習
  • 上記の動きが日常動作で行えるよう練習

2ヶ月以上膝が伸び切らない状態で過ごされていたので、膝回りは非常に固くなっていました。

ストレッチや関節モビリゼーション、トレーニングによる筋収縮を促すことで徐々に関節可動域は改善。

1ヶ月後には正座ができるようになりました。

その後も段階的にリハビリの負荷を上げていき、ジョギング、ジャンプ、片足での動作なども練習していただき、少しずつ日常生活で痛みを感じることが少なくなってきました。

今では愛犬と山に散歩へ出かけられるほど状態は回復し、日常生活でできないことがほとんどなくなりました。

今後の目標

怪我をする前のように愛犬と一緒にハイキングに行ったり、海に行ったり、ドッグスポーツを楽しむ事です。
中尾 優作
中尾 優作
少しずつ元の生活に近づいていることは非常に喜ばしいことですが、今以上に膝の状態を改善し、完全に手術前の生活に戻れるよう引き続きサポートさせていただきます。

プロのスポーツトレーナーによる治療とリハビリを試されたい方は、ぜひ一度ご相談ください

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