2023.09.22
腰痛
【セルフチェック】ほぼ全ての腰痛はこの6種類!
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
腰痛に悩まされる人は多いですが、”腰痛”と一括りにしても病名は症状はそれぞれ違います。
しかし、腰痛を持っている人の9割は今から紹介する6種類の腰痛のどれかに該当するはずです。
腰痛改善にはまず、自分の腰痛を理解することが大切です。
腰痛の中でも特に患者数の多い病気の症状が自分に当てはまらないかご自身でチェックし、腰痛の原因を解明してしていただければと思います。
自分の腰痛はどの種類?
腰痛は人によって痛みや原因が違うので症状が改善できずに長引いてしまうことが多いです。
検査をして自分がどの腰痛か知ることができても、それが症状の改善に直結するかはわかりません。
しかし、自分の腰が今どのような状態なのかを理解することはとても大切です。
腰痛を改善するための最初の一歩は、自分の腰痛がどの種類の腰痛なのか?を知ることです。
何か特別な原因があるのか、それとも検査をしても原因が特定できない腰痛なのか、自分の腰の状態を知ることで、改善までの道筋を立てることができます。
それでは腰痛は一体どれだけ種類があるのでしょうか?特に有名で患者数の多い腰痛はこの6種類です。
自分の症状と合う腰痛があるかチェックしてみてください。
読み進める前に、腰痛の基礎知識を確認したい方はこちらの記事にまとめてありますのでご覧ください。
① 腰椎椎間板ヘルニア
一般的に「ヘルニア」呼ばれている症状ですが、正式には腰椎椎間板ヘルニアと言います。
腰部の椎間板ヘルニアが一番多いですが、胸部、頸部でもヘルニアは起こり、それぞれ胸椎椎間板ヘルニア、頸椎椎間板ヘルニアと言います。
まず、椎間板とは背骨の間にあるクッションとしての役割をしている軟部組織です。
人間が歩いたり走ったり、前屈したり後屈したりするときに、椎間板がなければ骨同士がぶつかり合って骨折や骨の打撲が起こってしまいます。
これを防ぐために骨同士の間に椎間板というクッションがあり、身体にかかる衝撃を和らげています。
この椎間板の中心部には髄核という部分があります。
椎間板への度重なる衝撃に耐えきれず、髄核が椎間板を内側から突き破り、椎間板の外に出てしまうことを椎間板ヘルニアと言います。
ちなみに「ヘルニア」という単語は英語の「Herniation(ヘルニエイション)から由来していて、「突出する」という意味があります。
髄核は腰椎に対して前後左右どの方向にも突出することがあります。
後方に突出して椎間板の真後ろにある神経を圧迫してしまうと、痺れなどの神経的な症状が出てしまい、悪化すると手術が必要になります。
ヘルニアは若いスポーツ選手から高齢者まで幅広い年代で見られる病気です。
椎間板ヘルニアの特徴
- 腰がだんだん痛くなった
- 腰や足に痺れがある
腰椎椎間板ヘルニアについてより詳しい記事はこちらになります。
② 腰椎分離症・すべり症
腰椎分離症は簡単に説明すると腰椎後方の疲労骨折です。腰椎は前方の椎体と呼ばれる丸い部分と、後方の椎弓という細い部分に分かれています。
椎体と椎弓が結合することで中央に円形の空洞部分が形成され、この空洞を神経が通っています。椎弓はとても細く脆い骨で、繰り返されるスポーツ動作などが疲労骨折を引き起こします。
分離症は若いスポーツ選手や学生に多く、中には痛みを感じずに大人になってから分離症だったと気づく人もいます。
スポーツ動作の中でも特に腰を捻る動作が椎弓に大きなストレスを与えます。
例えばゴルフのスイング練習で「腰を回せ」と教える方がいますが、実は5つある腰椎同士が重なる角度の問題で、関節としての構造上、回線動作はほとんどできない部位になっています。
背骨の中で主に回旋動作ができるのは胸椎と頸椎ですが、回らない腰を回そうとすると、上下の腰椎同士がぶつかってしまい疲労骨折を起こしてしまいます。
椎弓部分が折れてしまうと、椎体との結合部分がなくなってしまい、椎体と椎弓が離れてしまいます。これを腰椎分離症と呼びます。
椎弓が椎体から離れて後方に動いてしまうのに対して、椎体は前方に動いてしまうことがあります。このように、腰椎が前にずれてしまうことを腰椎すべり症と呼びます。
すべり症は必ずしも分離症が悪化して起こるわけではなく、分離症を伴うすべり症を分離型と呼び、分離症を伴わずに椎間板の変性などの影響で発生するすべり症を変性型のすべり症と呼びます。
分離症・すべり症の特徴
- 腰を捻ると痛みが出る
- 腰の後ろが痛い
腰椎分離症と腰椎すべり症についての詳しい記事はこちらになります。
③ 脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症は背骨を通る神経の通り道が圧迫される病気です。
背骨の中央部分には脊柱管と呼ばれる空洞があり、その空洞部分を神経が通っています。
様々な原因によってその神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されることで、痛みや痺れを感じます。
多くの場合、神経前方の椎間板の変異や骨の変形、神経の後方にある靭帯が厚く変性することが原因とされています。
脊柱管狭窄症の症状で痛みや痺れ意外で、顕著に現れるのが間欠性跛行という症状です。間欠性跛行とは、少し歩くと足に痛みや痺れが出てしまい、長い距離が歩けなくなってしまう症状です。
しばらく座って休んだり、前屈みの姿勢を取ると症状が和らぎまた歩けるようになるのですが、長距離を一度に歩くことが難しくなります。
脊柱管狭窄症の特徴
- 腰に痛みや痺れがある
- 歩くと痛みが出るが、少し休むと治る
- 長時間歩くことができない
脊柱管狭窄症に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
④ ぎっくり腰(急性腰痛症)
一般的にぎっくり腰と呼ばれる症状は、医学的に急性腰痛症と呼ばれています。
ぎっくり腰の原因はいまだに解明されていませんが、腰の靭帯、筋肉、筋膜などの損傷と考えられています。
検査をしても細かい原因を見つけることが難しいので、「急性腰痛症」=「急に腰が痛くなった」という症状名が付けられ、靭帯や筋肉など特定の組織の名称が症状名に入らないようになっています。
ギックリ腰になる要因としては、前屈みになる、急に重い物を持つ、朝起きたら急に、くしゃみをしたら、など様々なものがありますが、なぜぎっくり腰になるかという理由は判明していません。
医療機関でも特別な治療を受けられることは少なく、湿布を貼って安静にし、痛みが引いてきたら少しずつ動くというのが一般的な対処法となります。
しかし、湿布は炎症を抑えるもので、ぎっくり腰に効果的な治療とは言えないので注意してください。
ぎっくり腰の特徴
- 腰が急に痛くなる
- 非常に鋭い痛み
- 何らかの動作によって起こる
ぎっくり腰に関してはこちらの記事で詳しく紹介しています。
⑤ 仙腸関節障害
仙腸関節とは骨盤にある仙骨と腸骨の間にある関節です。
この関節は多くの強力な靭帯に支えられていて、通常は数mmしか動かない関節です。
普段は動くことのない仙腸関節が何らかの原因により動きすぎてしまうことで、仙腸関節障害が起こり、腰痛や足の痛みに繋がります。
例えば出産直後の女性は仙腸関節が緩んでいることが多いです。
他にも、直立していると右肩の方が高かったり、つま先の向きが左右で違うなど、左右のバランスが悪い姿勢も仙腸関節障害の要因になります。
仙腸関節障害も検査で原因を特定するとこは難しく、症状と痛みの出方に応じて対処する必要があります。
仙腸関節障害の特徴
- 腰に鈍痛がある
- 普段から姿勢が悪い
⑥ 慢性腰痛
3ヶ月以上続く腰痛を慢性腰痛と言います。
腰痛に悩まされているほとんどの方がこの慢性腰痛に該当するはずです。
検査をしても特定の症状に該当しない、もしくは何かしらの変異が見つかったが症状と一致しないなど、痛みの原因が解明できない腰痛が多いです。
実際医療現場にいると、レントゲン、CT、MRI全ての検査を受けても何も見つからないが痛みはある、というケースは非常に多いです。
検査をしても痛みの原因がよくわからない腰痛は、慢性腰痛、もしくは腰痛症と診断されることが多いです。
多くの場合では原因が特定できないので、生活習慣や日常動作の改善をしたり、腰回りの筋力を付けるなどの対応が一般的です。
慢性腰痛の特徴
- 腰が3ヶ月以上痛い
- 痛みの原因がわからない
まとめ
腰痛の種類は大きく分けると上記の6種類になります。他にも数多くの腰痛がありますが、この6種類以外の腰痛になることは珍しいです。
腰痛の種類を全て覚える必要はありませんが、自分がどの腰痛かをチェックすることは非常に大切です。
自分の身体のどの部分が腰痛の原因なのか、もしくは自分の腰痛は検査をしても原因が特定できない腰痛なのか。それを知っているだけで悪化のリスクや対処法が大きく変わってきます。
腰痛は検査をすれば何かが解決する病気ではありませんが、少なくとも自分の腰がどのような状態なのかを把握しておきましょう。腰痛を改善するためにもまずは自分の腰痛の種類を特定することが重要です。
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