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Case Study 症状別事例

2024.10.29

ジャンパー膝

膝蓋靭帯炎にはアイソメトリック収縮が効果的?医学論文のエビデンスを解説

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

今回紹介する論文は”膝蓋靭帯炎を持つシーズン中のアスリートの疼痛軽減に対する等尺性収縮と等張性収縮の比較”です。

ジャンパー膝とも呼ばれる膝蓋靭帯炎には、運動療法やトレーニングが効果的というのは一般的ですが、痛みを減らすにはどのような筋肉の収縮方法がより効果的なのか?を調べた研究です。

代表的な筋肉の収縮方法であるアイソメトリック(等尺性)収縮とアイソトニック(等張性)収縮を比較しています。(後ほど詳しく解説します)

結論から言うと、どちらの収縮方法も膝蓋靭帯炎の痛みを軽減する効果がありますが、アイソメトリック収縮はさらに、実施直後45分間の劇的な痛み軽減効果も報告されています。

そのため、膝蓋靭帯炎のリハビリでは、痛みを出しにくいアイソメトリック収縮のエクササイズを使うのが良いのではないかと考えられます。

それではより詳しく論文を解説していきます。

論文の概要

この論文は筋肉の収縮方法が膝蓋靭帯炎の疼痛軽減に与える影響について調べた3本の論文をまとめた論文となっています。

全ての論文合計すると55名の膝蓋靭帯炎を持つシーズン中のアスリートが被験者となりました。

まずはアイソメトリック収縮とアイソトニック収縮についてわかりやすく説明します。

アイソメトリック収縮というのは等尺という漢字のとおり、”筋肉が力を発揮している間に筋肉の長さが変わらない収縮様式”のことを言います。

例えば、地面に直立しているときは筋肉はアイソメトリック収縮を行っています。

筋肉は身体を動かすことなく、身体が倒れないように力を発揮している状態です。

逆にアイソトニック収縮というのは、”筋肉の長さが変わりながら力を発揮している収縮様式”です。

アイソトニック収縮のときは必ず関節が動きます。

例えば、物を持ち上げるとき、椅子から立ち上がるときなど、関節が動くときは必ず筋肉の長さが伸び縮みします。

これらの筋肉の収縮様式の違いによって、膝蓋靭帯炎の痛みを軽減する効果が変わるのか?というのがこの論文のテーマです。

膝蓋靭帯炎に対する痛みの軽減

今回の研究では以下の結果が報告されています。

  1. アイソメトリック収縮とアイソトニック収縮、どちらのエクササイズも4週間で膝蓋靭帯炎の痛みを軽減させた
  2. アイソメトリック収縮は実施直後45分間の即時的な痛みの軽減効果もあった

それぞれ解説していきます。

長期的な疼痛軽減効果

この研究結果によると、アイソメトリック収縮のエクササイズとアイソトニック収縮のエクササイズ、どちらも4週間で膝蓋靭帯炎の痛みを軽減する効果が確認されています。

この結果を参考にすると、長期的な膝蓋靭帯炎の疼痛軽減においては、どちらの収縮方法を使っても痛みの改善が期待できるということになります。

これはリハビリメニューを考える上で、エクササイズ選択の幅が広がるという点で大切です。

即時的な疼痛軽減効果

アイソメトリック収縮に限っては、実施直後に痛みが軽減する効果も報告されています。

運動をしてから45分間、膝蓋靭帯炎による痛みが劇的に軽減するようです。

この効果を利用して、膝蓋靭帯炎の選手がウォーミングアップにアイソメトリックエクササイズを取り入れると、痛みのない状態で練習を始めることができると考えられます。

シーズン中の膝蓋靭帯炎改善

この研究結果が最も役に立つのは、シーズン中のスポーツ選手に対する膝蓋靭帯炎の管理です。

これまで膝蓋靭帯炎にはアイソトニック収縮の中でも、イーセントリック収縮のエクササイズが効果的だと考えられてきました。

しかし、イーセントリック収縮のエクササイズは非常に強度が高く、痛みも伴うのでシーズン中の選手が取り入れにくいという問題がありました。

この研究で示されたとおりアイソメトリック収縮がアイソトニック収縮と同等の効果を期待できるなら、運動負荷が低くて痛みを出しにくいアイソメトリック収縮がより導入しやすいと思います。

シーズン中で身体の負荷が高い中で膝蓋靭帯炎を改善するためには、より負担のかからないアイソメトリックエクサイズを選ぶことが良さそうです。

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)についてより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

参考文献
Vang C, Niznik A. The Effectiveness of Isometric Contractions Compared With Isotonic Contractions in Reducing Pain For In-Season Athletes With Patellar Tendinopathy. Journal of Sport Rehabilitation. 2021;30(3):512-515. doi:10.1123/jsr.2019-0376

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