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Case Study 症状別事例

2022.05.02

半月板損傷

半月板損傷

執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)

ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。

半月板損傷はスポーツ選手に多くみられる膝の怪我です。

このページでは神戸三宮で活動するスポーツトレーナーが、このようなお悩みを解決するための最新情報をまとめています。

記事の内容
  1. 半月板損傷に関する最新情報を知りたい
  2. 半月板損傷の治し方を知りたい

半月板の怪我は治すのが難しく、場合によっては手術をしなければいけません。

手術を避けるためには半月板に負担のかからない動き方を習得し、膝を正しく支えるための筋肉をつけなければいけません。

膝の痛みがなくなったからといって半月板自体が治ったわけではないので、再発予防も含めた治療とリハビリが大切です。

この記事を読み終えると半月板損傷への理解が深まり、どのようにすれば怪我を治せるか?ということがわかるようになります。

ぜひ正しい知識を身に付けて、1日でも早い痛みの改善に役立ててください。

半月板縫合手術後のリハビリ体験談

30代女性Lさん
Lさんは2年前から続く、半月板縫合手術の後遺症にお悩みで相談に来られました。半月板手術後から痛みが続き、趣味のスポーツやヨガを再開できないどころか日常生活でも頻繁に痛みを感じていました。手術後に適切なリハビリを受けることができずに時間だけが経過してしまい、膝関節の可動域や筋力が全く回復していませんでした。改めて膝周りの筋力強化と動作の再習得を行い、2年ぶりに痛みなく走ることができるまで回復されました。
体験談を詳しく読む

半月板とは?

半月板とは膝関節にある軟部組織です。

一つの膝には内側半月板外側半月板の2つがあり、内側の半月板が”C”、外側の半月板が”O”に近い形をしています。

半月板には大きく2つの役割があります。

膝の衝撃を減らす

半月板には強い弾力性があり、膝関節への衝撃を吸収する役目があります。

半月板は太ももの骨である大腿骨と膝の骨の脛骨の間に挟まっていて、半月板のおかげで膝を曲げ伸ばししても骨同士がぶつかることはありません。

膝関節の衝撃吸収クッションのような役割を半月板が担っています。

関節の安定化

脛骨の表面は平面ですが、大腿骨の表面はでこぼこしています。

半月板がそれぞれの骨の間に挟まることで、骨同士が安定して接することができます。

もし半月板がなければ、骨同士の接する面が減ってしまい、とても不安定な関節になってしまいます。

半月板損傷とは?

半月板損傷とはその名のとおり、半月板が傷ついてしまう怪我です。

半月板は弾力性がありますが、そのぶんねじれや回旋という力には弱くなっています。

損傷の仕方は様々で、縦や横に切れ目が入ってしまったり、中央に穴が空いてしまうこともあります。

また、膝の大怪我である前十字靭帯を損傷するときに、半月板を同時に痛めてしまうことも非常に多いです。

半月板損傷の原因

半月板はスポーツ動作で損傷することがほとんどですが、加齢も半月板を痛めてしまう原因の一つです。

特に半月板への負荷がかかってしまう動きもあるので注意してください。

膝の捻れや回旋

スポーツ中の動作で膝にねじれるような力が加わると、半月板を損傷しやすいです。

例えばバスケットボールのピボット動作や、アメリカンフットボールの急な方向転換のような動きです。

膝に荷重している

半月板が傷つくのは、膝に体重がかかっているときがほとんどです。

足が宙に浮いているときなど、膝に荷重していないときに痛めることは珍しいです。

膝に体重がかかった状態で、先に話した膝のねじれや回旋といった動作が加わると、半月板を擦り切ってしまうような力が働いてしまいます。

ディープスクワット

スクワットの1種で、お尻を地面に近づけるディープスクワットと呼ばれるスクワットも半月板への負荷が高い動きです。

足に地面がついた状態で膝が完全に曲がった状態が、特に半月板へのストレスとなります。

ウエイトリフティングのスナッチ動作や、うさぎ飛びもこの動作に当てはまるので注意してください。

加齢

スポーツ動作だけでなく、歳を取ることも半月板を損傷する原因になります。

半月板も腰の椎間板と同じで、歳を重ねると組織中の水分量が減少し、薄くなっていきます。

薄くなってしまった半月板は弾力性が低下してしまうので、膝への衝撃に耐えられずに破れてしまうことがあります。

半月板損傷の症状

半月板を怪我したときは、さまざまな症状が膝に現れます。

これらの症状の中に半分以上自分の膝にも当てはまる症状がある場合は、高い確率で半月板の怪我が疑われます。

膝の痛み

半月板を痛めたときは、膝に痛みを感じます。

痛みの強さは損傷の程度によって個人差があり、内側半月板を損傷した人は内側、外側半月板を損傷した人は外側に痛みを感ることが多いです。

膝関節の腫れ

半月板が損傷したときは、膝が大きく腫れることがあります。

内側や外側だけでなく、お皿の上や膝の裏も腫れてしまうことが多いです。

膝の硬さ

半月板を損傷すると、膝周りに硬さを感じることがあります。

筋肉が硬いというよりは関節自体が硬いという感覚で、膝が動かしにくくなります。

膝のロッキング

膝の硬さと似た感覚ですが、膝の中が引っ掛かって動かなくなることがあります。

特に膝を伸ばすときに起こることが多く、伸ばしている最中に突然膝を動かすことができなくなります。

膝の中で音が鳴る

膝を曲げ伸ばしした際に、関節の中で音が鳴ったり、音がするような感覚があります。

クリック音やポップ音と表現されることが多く、膝の中で何かが引っ掛かるように感じます。

これは傷ついた半月板が擦れるときの音と考えられています。

膝のぐらつき

半月板が損傷することで膝の安定性が下がり、膝がぐらぐらするように感じます。

大腿骨と脛骨の間でクッションの役割をしている半月板が傷ついて形が変わると、関節面が正しく合わなくなるので安定性が落ちてしまいます。

半月板損傷の診断

半月板の検査にはさまざまな方法がありますが、MRI検査が最も正確に半月板の状態を確認することができます。

医者はほとんどの場合でMRI検査の結果から、半月板の怪我を診断します。

スペシャルテスト

半月板の損傷が疑われる場合は、マクマレーテスト(McMurray test)やアプレーテスト(Apley’s test)という半月板損傷専用のテストがあります。

ベッドの上で行う手技のテストですが、MRI検査に比べると正確性が落ちてしまうので、あくまで怪我した直後の確認作業として使われています。

MRI検査

半月板は軟部組織なので、MRI検査によって状態を確認することができます。

損傷の程度や腫れ、他の組織の状態まで細かく見ることができるので、半月板損傷の診断にMRI検査は必須と言えます。

レントゲンやCT検査では半月板を確認することができません。

関節鏡

関節鏡は膝の中に小型のカメラを入れて関節の中を見ることができます。

損傷した半月板を直接確認することができ、場合によってはそのまま手術を行うことも可能です。

ただし、実際にカメラを膝関節に挿入して行う検査なので、半月板損傷がほぼ確定している状態で行われます。

半月板損傷の治療

半月板損傷の治療方法は、手術と手術を行わない保存療法の2つに分かれます。

どちらの治療方針が選ばれるかは、これらの要因を考慮した上で判断されます。

  •  損傷の場所
  •  損傷の大きさ
  •  傷の形
  •  年齢

特に重要なのが損傷の場所です。

半月板は外側3分の1だけ血管が多く通っているので、外側を損傷した場合は自然に治る可能性もあります。

しかし、損傷した場所が半月板の内側だった場合は自然に治る可能性は低いので、症状が強い場合は手術を行う必要があります。

保存療法

手術を行わずに半月板を治療する方法です。

傷が半月板の外側にある場合や、傷が中央でも症状が軽い場合に保存療法が選択されます。

痛みや腫れの様子を見ながら、理学療法によるリハビリを行います。

関節可動域の改善

半月板を痛めた直後は、膝が硬くなり可動域が低下してしまいます。

痛みのない範囲で膝の曲げ伸ばしを行い、少しずつ元どおりの可動域に戻すことが大切です。

筋力の強化

半月板を損傷した膝は筋力が落ち、安定性も下がります。

膝周りの筋肉を鍛えることで、関節の安定性を改善することができます。

内側半月板を損傷したときは膝の内側にある筋肉、外側半月板を痛めたときは膝の外側にある筋肉を重点的に鍛えると効果的です。

2022年に発表された論文では、半月板損傷直後に手術を受けず、まずは保存療法を試した後に手術を受けても長期的な回復に影響がないことが報告されています。
>> 半月板を怪我したらすぐに手術するべき?リハビリを試した後に手術しても遅くない

手術

半月板の手術には関節鏡が使われます。

メスで膝を切る手術に比べ、カメラを通す小さな穴を2〜3箇所開けるだけで手術できるので、跡が目立ちにくいです。

関節鏡手術によって傷ついた半月板を縫合したり部分切除した後は、保存療法と同じようにリハビリを行って膝の機能を回復させます。

半月板損傷の予防

半月板は一度怪我すると完治させるのは難しい怪我と言われています。

膝の痛みが改善されたあとも再発予防のためにトレーニングを継続することで、膝の状態が悪化することを防いでくれます。

筋力強化

半月板を損傷した後は膝の筋力が低下してしまいます。

怪我をしていない側の足と同じ太さ、筋力を目指して筋力トレーニングを継続することが大切です。

下半身の柔軟性向上

膝だけではなく、足首や股関節の柔軟性を上げることが大切です。

足関節や股関節の可動域が増えることで、膝関節への負担を減らすことができます。

疲労のコントロール

身体や足に疲労が溜まっている状態だと怪我をしやすいです。

筋肉が機能的に働けるように、適切な食事や睡眠を心がけましょう。

十分な準備運動

運動前の入念なウォーミングアップも怪我の予防には不可欠です。

準備運動で身体を温めることで筋温が上昇し、筋肉が働きやすくなります。

肥満改善

体重が多いと膝への負担も増加してしまいます。

必要以上に体重が重い人は、減量をすることで半月板損傷の再発防止になります。

半月板損傷まとめ

半月板損傷とは、膝関節にある半月板を痛めてしまう怪我です。

半月板損傷の症状
  • 膝の痛み
  • 膝まわりの腫れ
  • 膝関節の硬さ
  • 膝関節から音が鳴る
  • 膝のぐらつき
半月板損傷の原因
  • 膝のねじれる動き
  • 膝に体重が乗っている
  • 膝を完全に曲げた姿勢
  • 加齢
半月板損傷の治療
  • 治療方針は怪我の状況次第
  • 関節可動域の改善
  • 膝まわりの筋力強化
  • 関節鏡手術
半月板損傷の予防
  • 膝の筋力強化
  • 下半身の柔軟性向上
  • 疲労のコントロール
  • 十分な準備運動
  • 肥満改善

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治療で痛みを改善するのは当然ですが、みの根本的な原因を治療することが大切です。

身体の痛みは、痛みのある部位だけが原因とは限りません。

例えば半月板損傷の場合は、不適切な運動フォームや筋力バランスの悪さによって膝への負担が増えることが主な原因です。

痛みを治療しても、痛みの元となる原因を取り除かないことには怪我が再発してしまいます。

Lifelongの治療方針は痛みの改善だけでなく、怪我の原因を根本から改善することです。

痛みが出るたびに治療を受けるのではなく、痛くなる原因を改善して痛みが再発しない身体を目指しましょう。

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