膝には多くの靭帯が付いていて、膝関節の安定性を高めています。
特に有名な靭帯は以下の4つです。
前十字靭帯
後十字靭帯
内側側副靭帯
外側側副靭帯
最近では、これらの靭帯以外にも膝蓋骨(お皿)に付着する3種類の靭帯が話題になることが多くなりました。
その靭帯は膝蓋大腿靭帯、膝蓋半月靭帯、膝蓋脛骨靭帯と言いますが、古い解剖学の本には載っていません。
また日本語でこれらの靭帯を検索してみても、詳しい情報が見つからなかったのでこの記事を書くことにしました。
この記事では膝蓋骨に付着する膝蓋大腿靭帯、膝蓋半月靭帯、膝蓋脛骨靭帯の解剖学的な情報と機能を紹介しています。
近年新たに靭帯として認識された新しい靭帯の情報を知りたい方はぜひご一読ください。
参考文献は以下の論文です。
この記事は海外で理学療法を学んだプロのスポーツトレーナーが執筆しています。
このページの執筆者

中尾 優作 スポーツトレーナー/理学療法士
イギリスの大学、ベルギーの大学院で理学療法を学ぶ。国内外のプロスポーツクラブでトレーナーとして活動したのち、地元神戸でリハビリジム【ライフロング】を設立。トレーナー歴17年目。
主な活動場所
⚫︎ 欧州サッカークラブ
⚫︎ B.LEAGUE
⚫︎ 東京2020オリンピック
膝蓋骨に付着する靭帯の解剖学
今回紹介する膝蓋大腿靭帯、膝蓋半月靭帯、膝蓋脛骨靭帯は、それぞれ内側と外側についているので、合計で6本の靭帯になります。
まずはこれらの靭帯がどこに付着しているのか確認してみましょう。
内側膝蓋大腿靭帯
膝蓋骨内側中央から大腿骨内側上顆
内側膝蓋半月靭帯
膝蓋骨内側下部から内側半月板前方中央
内側膝蓋脛骨靭帯
膝蓋骨内側下部から脛骨内側顆
外側膝蓋大腿靭帯
膝蓋骨外側中央から大腿骨外側上顆
外側膝蓋半月靭帯
膝蓋骨外側下部から脛骨外側顆
外側膝蓋脛骨靭帯
膝蓋骨外側下部から脛骨外側顆
膝蓋骨に付着する靭帯の機能
膝蓋骨に付着している靭帯の主な機能は、外側ストレスに対する膝蓋骨の安定化です。
わかりやすく言うと、お皿が外側に脱臼するのを防ぐ役割があります。
例えば膝蓋骨を外側方向へ押したとき、内側に付着している内側膝蓋大腿靭帯、内側膝蓋半月靭帯、内側膝蓋脛骨靭帯が膝蓋骨を内側に引っ張ることで、膝蓋骨の脱臼を防いでいます。
膝蓋骨が内側方向へ動いたときも同様に、外側に付着している靭帯が膝蓋骨を支えています。
靭帯が損傷したときの症状
膝蓋骨の内外側に付いている靱帯が靭帯が損傷したときは、以下のような症状が見られます。
膝蓋骨の脱臼
膝蓋大腿靭帯、膝蓋半月靭帯、膝蓋脛骨靭帯はどれも膝蓋骨の外側ストレスに対する安定性を担う靭帯です。
そのため、これらの靭帯が損傷や断裂をしてしまうと膝蓋骨が外側や内側に動きすぎてしまい、膝蓋骨脱臼という怪我につながってしまいます。
膝前面の痛み
膝蓋半月靭帯と膝蓋脛骨靭帯は膝蓋骨から膝の前面に付着しているため、このどちらかの靭帯を損傷すると膝の前面に痛みが出ると報告されています。
膝の不安定感
2011年に発表された論文によると、膝蓋半月靭帯を損傷すると膝が不安定に感じるようです。
特に体重をかけた状態で膝が完全伸展(真っ直ぐ伸びた状態)のときに不安定感が出るようです。
まとめ
膝蓋骨には膝蓋大腿靭帯、膝蓋半月靭帯、膝蓋脛骨靭帯という3種類の靭帯がそれぞれ内側と外側に付着しています。
これらの靭帯は、主に膝蓋骨への外側ストレスに対して膝蓋骨を安定させる役割があり、損傷すると膝蓋骨脱臼や膝前面の痛み、膝の不安定感という症状が出るようになります。
まだ日本の解剖学では馴染みのない靭帯ですが、ぜひ覚えておくようにしましょう。