2024.09.04
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアのリハビリテーション
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
腰椎椎間板ヘルニアはリハビリによって改善する可能性が高い腰痛です。
特に大切なのが、腰に負担をかけている原因を取り除くことです。
痛みのある腰をマッサージなどでほぐしても、根本的な痛みの原因は治りません。
運動療法によって自分の身体を鍛え直すことが、改善への第一歩です。
この記事では、神戸三宮で活動する理学療法士が、海外で学んだ知識と経験をベースにした椎間板ヘルニアに対するリハビリ方法を紹介します。
腰椎椎間板ヘルニアでお困りの方が少しでも痛みや痺れを改善するための役に立てれば何よりです。
腰椎椎間板ヘルニアの原因
まず最初に腰椎椎間板ヘルニアの原因をおさらいします。
ヘルニアの最も多い原因は腰が丸くなることです。
正確には骨盤の後継といい、骨盤が後ろに傾く動作や姿勢です。
骨盤が後傾すると腰椎が丸まり、椎間板の前面が圧迫されることで、椎間板が後方に押し出されます。
そして椎間板が後方の靭帯や神経を刺激することで痛みや痺れが出る、というのが椎間板ヘルニアのメカニズムです。
これに加えて猫背や体幹の筋力不足など、椎間板への負担を増加させる原因もあります。
腰椎椎間板ヘルニアのリハビリ目的
それではどのようにしたら椎間板の圧迫を軽減できるのでしょうか?
腰椎椎間板ヘルニアのリハビリテーションにおいて、以下4つの要素に取り組むことが改善の鍵となります。
- 骨盤後傾の改善
- 胸椎後弯の改善
- 腰椎安定性の改善
- 動作の改善
骨盤後傾の改善
まず重要となるのが、骨盤の過度な後傾を防ぐことです。
骨盤には前後左右、多くの筋肉が付着しています。
これらの筋肉の強さや弱さ、そして硬さなどが影響して骨盤の向きを変化させてしまいます。
骨盤が後傾し過ぎないようにするためには、骨盤周囲の筋バランスを整えることが大切です。
臀部、ハムストリングスのストレッチ
お尻と太ももの裏に付いている筋肉が硬くなると、骨盤が下方向に引っ張られます。
この張力によって骨盤は後傾してしまいます。
そのため、臀筋とハムストリングスの柔軟性を上げて、骨盤を下げないようにすることが大切です。
- 床に片足を曲げて座り、逆足を胸の前で抱える
- 膝を胸に引き付けながら、身体は逆方向にひねる
- 仰向けになって足にバンドをかける
- 膝を伸ばしたままできるだけ高く足を上げる
股関節屈筋群の強化
後面の筋肉とは逆に、股関節前面の筋肉が弱いと骨盤は後傾してしまいます。
特に腸腰筋は骨盤を前傾させる筋肉なので、腸腰筋の筋力が低下していると骨盤が前傾しづらくなってしまいます。
骨盤が後ろに引っ張られる力に耐えられるように、腸腰筋の筋力強化が大切です。
- 仰向けになり足にバンドをかける
- 片足は伸ばしたまま、膝を胸に引きつけるように上げる
胸椎後弯(猫背)の改善
猫背のように背中が丸くなる姿勢も腰椎椎間板ヘルニアの原因となります。
背中が丸くなると腰も一緒に丸まってしまい、骨盤の後傾へと繋がります。
胸椎後弯を改善するための考え方は、骨盤後傾とは逆です。
大胸筋のストレッチ
身体の前面にある大胸筋は肩甲骨に付着しています。
この筋肉が硬くなると、肩を前に引っ張ってしまい、背中が丸まります。
胸を大きく開けるようになるためには、まず大胸筋の柔軟性を高めましょう。
- 手のひらと肘を柱に固定する
- 身体を前に倒しながら、固定した手と逆方法に身体をひねる
肩甲骨周囲筋の強化
肩甲骨周りの筋肉が弱くなると、肩甲骨が外側に開いてしまい、これも背中を丸める原因となります。
僧帽筋という筋肉の下部繊維という部分が、特に肩甲骨を背骨に引き寄せる働きをします。
この筋肉を鍛えることで肩甲骨が内側に寄り、胸椎の後弯も改善されます。
- 正座のまま身体を前に倒し、片手の甲におでこをつける
- 逆の手は手のひらを天井に向けて真っ直ぐ伸ばす
- 肘を伸ばしたまま、肩甲骨を内側に寄せるように腕を持ち上げる
ストレートネックの改善
頭の位置も猫背に影響してきます。
ストレートネックと呼ばれる、頭が前方に移動してしまった姿勢も猫背を助長します。
頭が前に出ると、その重さに対してバランスを保つように背中が丸まってしまいます。
チンタックという首の深い場所にある筋肉を鍛えて、頭の位置を元に戻し、猫背を改善しましょう。
- 椅子に座り、首と頭の境目にバンドを当てる
- 頭を後ろにスライドさせるようにバンドを押す
腰椎不安定性の改善
姿勢以外にも腰椎椎間板ヘルニアの原因となるものはあります。
特に腰椎周囲の安定性が低下していると、腰を支えられなくなって椎間板に負担がかかってしまいます。
単純な腹筋の筋力だけでなく、腹圧を高めたり、腰を支えるための腹筋力を手に入れることが大切です。
腹圧の強化
腹圧というのは言葉のとおり腹部の圧力のことです。
具体的には、腰椎の上下左右にある筋肉が膨らむことによって腹腔内圧が増加し、その圧力によって腰椎が安定します。
腹圧というと、おへそを凹ませて力を入れる方が多いですが、実は逆でお腹を膨らませることで腹圧が高まります。
まずはブレーシングというトレーニングから、腹圧を高める練習をしてみましょう。
- 膝を曲げて仰向きになる
- お腹を膨らますように鼻呼吸をする
- 慣れてきたら、お腹を膨らませたまま足を交互に上げる
コアトレーニング
一般的に体幹の筋肉を鍛える運動をコアトレーニングと呼びます。
腰椎椎間板ヘルニアに効果的なのは、プランクのように腹筋を使って身体を安定させるエクササイズです。
腹圧を高めたまま腹筋を使い、腰を安定した状態を維持できるようになりましょう。
- 腕とつま先を支えに身体を浮かせる
- 身体が上下左右に動かないよう腹筋で耐える
腰に負担となる動作の改善
筋肉の柔軟性や筋力だけでなく、腰に負担のかかる動き方の改善も、椎間板ヘルニアのリハビリで大事な要素です。
どれだけ身体を鍛えても、腰にストレスのかかる動作を変えない限り、椎間板への負荷はかかり続けてしまいます。
特にヘルニアの方に多い、しゃがむ動作と前屈み動作で、腰に負担がかかりにくい動き方を覚えましょう。
しゃがむ動作の改善
これは腰痛の方なら一度は言われたことがあると思いますが、しゃがむときは必ず腰を落としましょう。
腰を上げたまま上半身を倒す動きは椎間板への負担が非常に大きいです。
特に重いものを持ち上げるときは、膝を曲げてしゃがみ込み、立ち上がる時も前を向いて胸を張って立ちましょう。
前屈み動作の改善
洗面台で顔を洗う時のように、前屈みになる時も腰への負担となります。
また、前屈みと同時に背中も丸まってしまうと、より腰にかかる負荷が高まってしまいます。
前屈みになるときは、背筋を伸ばしたまま上半身を倒すようにしましょう。
もし洗面台が低いと感じるときは、前屈みになる前に膝を少し曲げて腰を落とすと腰への負担を減らすことができます。
まとめ
腰椎椎間板ヘルニアのリハビリでは、いかに椎間板に負担をかけている要因を改善するかが大切です。
骨盤や胸椎を正しい位置に戻しながら、腰の安定性を高めるようにしましょう。
そして整えた身体を上手に使って、腰にストレスをかけない動き方も覚えることも大切です。
椎間板ヘルニアの痛みを減らすことに集中し過ぎずに、痛みの根本的な問題を改善して、痛みが出なくなる身体づくりを目指しましょう。
腰椎椎間板ヘルニアについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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