2024.03.29
理学療法
カヌー競技に多い怪我
執筆大澤 亮(理学療法士)
有名なスポーツ整形外科で主に手術直後のリハビリを担当。病院で培った臨床技術を活かし、ジュニアアスリートから高齢者の運動愛好家まで幅広い年代のリハビリを得意とする。自身のスポーツ歴は野球、バスケ、カヌー。
カヌー競技をしていると腰痛、手首の痛みなど様々な痛みに悩まされる方も多いと思います。
カヌー競技は競技姿勢などの特性上、腰や手首に痛みを訴える方が多いです。
このページでは幼少期カヌー競技に取り組んだ理学療法士が、カヌー競技の障害に関するお悩みに解決するための情報を紹介しています。
記事の内容
- カヌー競技に多い障害について知りたい
- カヌー競技に多い怪我の治療法を知りたい
- カヌー競技に必要な運動を知りたい
「練習後に腰が痛くなる」「手首が痛くて長時間練習できない」このような悩みを抱えているカヌー競技者も多いと思います。
カヌー競技は一般的に親しみがあまりないスポーツであり痛みが出たりしても動きの相談などがあまりできないと悩んでいる方も多いと思います。
この記事をご覧いただき、カヌーによる障害について理解を深め、少しでもご自身の症状改善・障害予防にお役立てください。
カヌー競技の動作特徴
カヌー競技では進行方向に向かって長座または正座し、パドルを使って進むという競技特性上、「腰」「肩」「手首」に痛みが生じやすいと言われています。
またパドルをこぐ際に前傾した姿勢で漕ぐ動作が特徴的です。
前傾姿勢を維持したままパドルを漕ぐ動作をするため腰に痛みが発生しやすくなります。
カヌー競技に多い障害
肩峰下滑液包炎
オーバーユース(使いすぎ)によって肩関節にある滑液包という方の動きを潤滑にする組織に炎症が起こることで痛みが生じます。
肩峰下滑液包炎では炎症の強い時期には安静にし、炎症の鎮静化が優先になります。
原因として
- 過度な肩関節の使用
- 不良な姿勢
- 外傷
等が考えられます。
炎症を起こす要因としてはインピンジメント症候群も考えられます。
インピンジメント症候群についてはこちらの記事で詳しく紹介していますので気になる方はご覧ください
腰椎椎間板ヘルニア
前傾姿勢による運動をすることで椎間板にストレスがかかり腰椎椎間板ヘルニアになってしまうことがあります
椎間板ヘルニアについて詳しく知りたい方はこちらの記事で紹介していますのでご覧ください。
TFCC損傷
TFCC損傷とは手首の小指側にある軟骨に損傷が起こる怪我です。
手首を使いすぎたり、外傷によって起こると言われています。
症状は手首の小指側に痛みが出たり、関節が動きにくくなったりします。
TFCC損傷の治療では手関節の安定性を高めるために周囲の筋力トレーニングを行ったりサポーターでの固定などが選択されます。
運動療法などを行ってもい熱海や不安定性が改善されなければ手術も考えられます。
カヌー競技の障害の予防方法
カヌー競技の障害は上記したように様々な種類があるため予防方法としては正しく体を使うこと、体に違和感を覚えたら休養をとることが重要です。
特に腰痛や肩の痛みにはフォームも多く関与します。
腰痛では競技特性上前傾姿勢での運動を必要とされるため腰への負担は大きくなりますが負担を減らすために体幹・下半身の筋力トレーニング、股関節周囲の柔軟性の獲得が必要となります。
怪我の予防だけでなく下半身の機能向上はパフォーマンスにも大きく影響します。
上半身を多く使うスポーツであるために下半身の重要性を忘れてしまいそうですが体幹の安定、回旋動作での可動域等下半身の機能はストローク動作で重要になります。
肩関節の痛みでは特に肩甲骨周囲の柔軟性、筋力、安定性が重要になります。
ストローク動作で腕を中心に使ってしまうと肩関節への負担が大きくなってしまうため肩甲骨から腕を動かすように動作を行うことが大切です。
カヌー競技に必要な運動
カヌー競技において必要な筋力、柔軟性には
- 肩関節周りの安定性
- 体幹の回旋筋力
- 下半身の安定性
- 股関節柔軟性
- 手首の安定性
等が挙げられます。
これら獲得するための家でもできる運動を紹介します。
肩関節周りの安定性
前鋸筋腕立て
- 肘と膝を付けて体が直線になるように四つ這いになる
- 肩甲骨を寄せるように体を下に落とす
- 肩甲骨を離すように体を上げる
体幹の回旋筋力
ロシアンツイスト
- 座った状態から足を浮かせて体幹を少し寝かせる
- 足を浮かせた状態から左右に体をねじる
下半身の安定性
ケトルベルスクワット
- ケトルベルを持ち肩幅より少し広く足を開く
- 股関節をめげながら下に降りる
- 地面を押すように上に上がる
股関節柔軟性
股関節回旋運動
- 両足を腰幅より開いて座る
- 両膝を左右に倒して股関節を回旋させる
手首の安定性
ダンベルリストエクステンション
- いすなどに座った状態でダンベルを持ち肘を固定する
- 肘を上下に動かす
※痛みがある場合は反対の手で手首を支えましょう。
カヌー競技での障害のまとめ
カヌー競技で多い怪我
- 肩峰下滑液包炎
- 腰椎椎間板ヘルニア
- TFCC損傷
怪我の原因
- 積み重なる負荷
- 柔軟性不足
- 競技姿勢による負荷
カヌー競技の怪我の予防
- オーバーユースにならないように練習量の調整
- 下半身体幹の筋力増強
- フォーム修正による負担軽減
カヌー競技での怪我では繰り返すストレスによる怪我が多いため、フォームの改善など体の使い方を見直さなければ繰り返す痛みを完全にとることは難しかもしれません。
痛みに対する治療だけでなく、痛みが出ない身体の使い方を覚えることが大切です。
関連する記事
-
2024.09.06
がん患者向け運動療法と筋力トレーニング
-
2024.08.06
オンラインリハビリテーション
-
2024.08.06
バレリーナ・バレエダンサーに対するリハビリの考え方と実例紹介