2025.12.31
理学療法
柔道に多い怪我と予防に効果的なエクササイズ
執筆森 雄樹
柔道整復師と鍼灸師の医療国家資格を持ち、整骨院の院長としても活躍。誰に対しても真摯に対応し、身体の問題点を究明。痛みのない生活へと導くサポートを行う。

柔道は相手の体勢を崩して、投げる、抑える、絞める、関節技など一連の立技、寝技の連携により競技が行われる武道の1つです。
他のスポーツや武道と異なる特徴としては、相手に接して技を仕掛けるため、四肢や体幹にも大きな負担がかかることです。
そのため、技をかけられた際に正しい受身が取れないと怪我のリスクが高まります。
他のスポーツ競技と比較しても2倍以上の頻度で怪我が発生しているという報告もあります。
今回はオリンピック競技としても世界に注目され続けている「柔道」に多い怪我について解説していきます。
後半では怪我の予防に効果的なトレーニングも紹介しているので、ぜひ怪我のリスクを下げるために役立ててください。
| この記事でわかること |
|
1.柔道による怪我の現状
スポーツ安全協会の報告によると、怪我の発生頻度は4,785件/10万人とあり、これは全スポーツ種目の平均的な発生頻度2,160件/10万人と比較して2倍となっています。
他の競技のように特定の部位の怪我が多いというよりは、身体全体に怪我の発生リスクがあります。
特に19歳から22歳の年代が最も怪我の発生頻度が高く、性別では男性の方が怪我をしやすいという統計データがあります。
怪我の種類
対戦相手との接触が多い柔道では特にこのような怪我が頻繁に発生します。
- 捻挫 (40.1%)
- 骨折 (19.8%)
- 脱臼 (13.0%)
これは技の攻防の中で相手の技をかわす、自分で技を仕掛けたときに相手の予想外の動きで投げられる、投げる際に身体を捻って負傷するなどの柔道特有の動作が原因になると考えられます。
2.怪我が起こりやすい部位

柔道で特に怪我をしやすい身体の部位は以下のとおりです。(軽・中量級)
- 膝関節(23%)
- 肩関節(19.7%)
- 腰部(14.8%)
- 足関節(11.5%)
膝や足は技をかけるときに相手に当たったり、投げられないように踏ん張ることが多い柔道では負担がかかりやすいです。
肩は投げれられた際に上手く受け身が取れないと、脱臼などの怪我につながる可能性が高くなります。
柔道では投げる際に体を捻る動作を起点にすることが多いので、そのような捻転動作が腰への負担へと繋がる原因となります。
ⅰ. 柔道の怪我:膝関節
大学生を対象にした研究によると、大学柔道選手の約4割が膝の怪我をした経験があるという報告があります。
その中で男子に多く発生した膝の怪我は、内側側副靱帯(58%)、次いで半月板損傷(31%)、前十字靭帯損傷(23%)と選手生命や日常生活に影響を及ぼす可能性の高い怪我が多かったです。
膝関節は投げられないように踏ん張る時など、身体を支えために重要な関節です。
柔道では競技中に膝を捻ってしまったり、相手が膝に乗ってしまうことで怪我につながります。
他のスポーツと同様に、膝の大怪我で手術を受けることになると、競技復帰まで1年ほどリハビリを行う必要があります。
身体の中でも特に大きな怪我をしやすい部位なので、膝の怪我に対する予防は非常に大切です。
ⅱ.柔道の怪我:肩関節
柔道では脱臼が肩関節の怪我で最も発生率が高いです。
肩関節の脱臼は大きく2種類あります。
- ・肩甲上腕関節(一般的に肩関節と言われるものの前方脱臼)
- ・肩鎖関節の脱臼(鎖骨と肩甲骨の関節)
これらは、投げられた際に肩から畳に落下した際、不用意に手を着いた際に発生します。
この中でも注意が必要なのは、肩関節の前方脱臼です。
反復性脱臼(一般に言われる”脱臼グセ”と言われるもの)になる事もあり、特に初めて脱臼したときの年齢が早いと反復性脱臼を起こしやすく、約75%以上が反復性に移行しやすくなってしまいます。
肩関節を脱臼すると、治療過程で関節を動かさないように固定する場合が多いです。
しかし、長期間固定することによって肩周辺の筋力低下が起き、関節の拘縮が重症化すれば手術をすることもあります。
肩を脱臼した後は適切なリハビリを行い、再脱臼を予防することが大切です。

引用:VisibleBodyによる提供
ⅲ.柔道の怪我:腰部
大学女子柔道選手を対象とした研究では、48.3%の選手が腰痛になっていると報告されています。
特に柔道で多い腰部の怪我は腰椎分離症、腰椎椎間板ヘルニアです。
技をかける際、相手の身体の下に入って相手の体を持ち上げることで、背骨に圧迫力がかかります。
さらに、自分の身体を捻って相手を投げるために背骨に回旋力も加わります。
これらの動作による腰への負担が日々の練習や試合で蓄積されてしまうと、慢性的な腰痛になってしまいます。
腰椎分離症は腰を回旋させすぎることで、腰椎が疲労骨折を起こす怪我です。
腰椎椎間板ヘルニアは背骨に圧迫力が加わることで椎間板が押し潰され、椎間板の後ろにある神経を圧迫する怪我です。
どちらも腰への過度な負荷によって起こる怪我なので、腰に負担をかけない動作と負荷に耐えるための腹筋力が必要です。
ⅳ.柔道の怪我:足関節
柔道では技の攻防の中で足手に足が当たったり、足首を捻って足をついてしまったりする事で捻挫をすることが多いです。
足の着き方によっては骨折をすることも珍しくありません。
足首は解剖学的に内側方向への捻挫をしやすい構造になっていて、捻挫をすると靱帯を損傷し、関節が不安定になってしまいます。
一度捻挫をすると足関節の安定性が低下してしまい、捻挫を繰り返しやすくなります。
4.怪我の予防について
柔道はコンタクトスポーツであり予測不能な要素が多いので、全く怪我なく柔道をすることは難しいです。
ですが、怪我の予防を取り入れて、怪我の発生リスクを抑えることは可能です。
柔道選手に効果的な障害予防トレーニングにはこのようなものがあります。
① 関節の柔軟性を高める
関節可動域を高めると身体の柔軟性が向上するので、捻挫や肉離れの予防に効果的です。
90/90
股関節の可動域改善エクササイズです。
腰が地面から浮きすぎないように注意して両膝を左右に倒します。
スコーピオン
背骨の回旋可動域を改善させるエクササイズです。
うつ伏せになり、片膝を曲げて反対側の地面に向けて伸ばします。腰を反りすぎないよう、背骨を回すように動かしましょう。
② 体幹の安定性を高める
体幹と呼ばれる腹筋や背筋を鍛えることで背骨の安定性が高まり、腰痛を予防することができます
プランク
体幹トレーニングとして非常に有名なエクササイズです。体を真っ直ぐキープしたまま、腹筋で支えるようにしましょう。
ワイパー
仰向けになり、足を揃えたまま左右に倒します。足が地面に着く寸前で脇腹の腹筋を使って足を戻しましょう。
③ 下半身の筋力を強化する
下半身の筋力を強化することで、技を掛け合う際の踏ん張りが効くようになります。また、筋力が上がると関節の安定性も向上し、捻挫しにくい身体になります。
スクワット
スクワットは下半身全ての筋力を同時に鍛えることのできる優秀なエクササイズです。
スタンディングクラムシェル
膝上にバンドをつけて片足立ちになり、浮かせた足を外側に大きく開きます。両足の中臀筋を鍛えるエクササイズで、片足の安定性を向上させる効果があります。
5.怪我を予防して柔道に取り組もう
今回は、柔道競技上でよく見られる怪我を紹介しました。
柔道はコンタクトスポーツなので、相手との接触も多く、怪我の多い競技です。
怪我の種類としては捻挫や骨折が多く、痛めやすい部位は膝、肩、腰、そして足首の順番となっています。
柔道を競技として取り組んでいる選手も、生涯スポーツとして趣味で楽しまれている方も、柔道で起きやすい怪我と部位を把握することで、予防に活かすことができます。
少しでも怪我のリスクを減らし、日々の練習と試合に挑んでください。
6.Lifelongの傷害予防トレーニング
神戸三宮のメディカルフィットネスジムLifelongでは医療従事者によるオーダーメイドトレーニングが受けられます。
専門的な知識を持ったトレーナーが、柔道で起きやすい怪我に特化した予防プログラムを考えて指導します。
練習を休まず取り組んで競技レベルを向上させるためにも、ぜひ怪我をしない身体づくりの相談をお待ちしています。
参考文献
肩関節疾患のリハビリテーション
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/12/53_928/_pdf
柔道科学研究
https://www.judo.or.jp/cms/wp-content/uploads/2013/09/kaken_03.pdf
柔道競技における外傷の実態
https://www.judo-seifuku.or.jp/common/doc/archive/r2/kiyou_04.pdf
柔道の傷害に関する研究 第一報
https://www.jstage.jst.go.jp/article/budo1968/23/2/23_117/_pdf/-char/ja
スポーツ傷害統計データ集
https://www.sportsanzen.org/about_us/grjkkl0000000f3g-att/dchamu000000040t.pdf
大学柔道選手の腰椎分離症
https://www.u-tokai.ac.jp/uploads/2024/02/ttj_of_sms_30_p27-32.pdf
大学女子アスリートにおける腰痛と身体特性の関連性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpess/23/2/23_111/_pdf/-char/ja
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