2021.11.05
肩こり
理学療法士が教える肩こりの予防法で大切な3つのポイント
執筆中尾 優作(理学療法士/プロスポーツトレーナー)
ヨーロッパの大学、大学院で理学療法を学ぶ。欧州サッカー、日本のB.LEAGUEでトレーナーとして活動したのち、地元神戸三宮にメディカルフィットネスジム【Lifelong】を設立。トップアスリートを始め、"病院で治らない痛み"に悩む人にワンランク上のリハビリを提供する。
肩こりはデスクワークが中心の会社員から主婦まで、幅広い方々が悩まれている生活習慣病です。
肩こりは首肩の痛みだけではなく、頭痛や吐き気など様々な症状によって、快適な日常生活を妨げてしまう大きな要因になります。
そのため、肩こりになってから治すのではなく、予防法に取り組むことで、肩こりを未然に防ぐことが重要です。
この記事では、肩こりにならないための予防、一度肩こりになってしまった方が再発を防ぐための情報をまとめています。
今すぐに実践できる3つのポイントを紹介していますので、是非目を通してみてください。
肩こりの症状と原因は?
そもそも肩こりはどのような状態なのでしょうか?
医学的に”肩こり”という病気は存在しません。
肩こりとは、肩の筋肉が張ってしまい、首や肩に痛みが出ることの総称で、主な症状は以下のとおりです。
- 首肩の痛み
- 肩上部の重だるさ
- 頭痛
- 吐き気
- 首肩の可動域低下
肩こりの原因として最も多いのは姿勢の問題です。
デスクワークや家事をしているときに、猫背になってしまったり、首が前に出てしまったりすることで、首や肩の筋肉に負担がかかってしまいます。
筋肉に負担のかかる姿勢を長時間続けることで、筋肉は次第に緊張し、張ってしまい、痛みや重さを感じるようになります。
肩こり予防法のポイント
肩こりを予防する上で大切なことは、”肩こりの原因と逆のことをする”ということです。
肩こりになる人は以下のような原因であることが多いです。
- 長時間に及ぶ、肩に負担のかかる姿勢
- 首を支える筋肉の筋力不足
- 仕事、生活環境
ここに挙げた肩こりの原因と逆のことをすることで、肩こりの予防に繋がります。
具体的には以下のとおりです。
- 姿勢の改善
- 首肩の筋力改善
- 仕事、生活環境の改善
① 姿勢改善で肩こり予防
肩こりになってしまう1番の原因は姿勢にあります。
これは立ち姿勢だけでなく、座っている時、動いている時など、普段の生活動作を行う全ての姿勢が影響していると言えます。
そして肩こりを予防する上で、特に気をつけなければいけない2つの姿勢があります。
猫背
まずは猫背です。
スマートフォンの普及やデスクワークの増加によって、猫背になる人の割合も増えています。
猫背になってしまうと、背中が丸まり、肩甲骨は外に開き、頭は前に出てしまいます。
前方に移動した頭を支えるために、肩の筋肉が必要以上に緊張してしまい、肩こりになってしまいます。
そのため、肩こりを予防するためには、猫背を改善することがとても重要です。
具体的な予防策としては、
- 胸の筋肉をストレッチする
身体の前面には2つの胸筋がついています。(大胸筋・小胸筋)
これらの筋肉が硬くなると胸が丸まってしまい、猫背になりやすい身体になってしまいます。
胸筋をストレッチし、柔軟性を保つことで猫背を防ぎ、結果として肩こりの予防に繋がります。
- ストレートネックを改善する
猫背と同様に肩こりの原因となるのがストレートネックです。
これは、肩に対して頭が前方に移動している姿勢のことを言います。
特にパソコンやスマホを見ているときになりやすい姿勢です。
頭が前に出ることで、首の後ろ、肩の上部にある筋肉(僧帽筋)が首を支えるため過度に緊張してしまいます。
筋肉が緊張した状態が長く続いてしまうと、やがて筋肉は硬くなり、痛みや張りを感じる原因となってしまいます。
ストレートネックを改善するには、普段から頭が首の真上にあるように意識することが大切です。
肩に張り感や痛みを感じる度に、首を正しい位置に戻し、緊張した筋肉を定期的に緩めることが肩こりの予防になります。
肩こりに効果的で、毎日5分で取り組める簡単なストレッチをこちらの記事で紹介しています。
② 肩こり予防の筋力トレーニング
肩こりの予防に筋トレは非常に効果的です。
首と肩まわりの筋肉を鍛えることで、
- 正しい姿勢を取るための筋力
- 首を正しい位置で保持する筋力
を獲得することができます。
正しい姿勢を取るための筋力
肩こりの予防法では、肩の筋肉に負担のかからない正しい姿勢を取ることは重要ですが、そもそも正しい姿勢を取ることができない人が多いです。
猫背姿勢から背筋の伸びた綺麗な姿勢に直すには、胸を開き、肩甲骨を寄せ、骨盤を前に傾ける必要があります。
この姿勢を取るために最低限必要な筋力をつけることが、肩こり予防法において大切です。
具体的なトレーニングも紹介させていただきます。
僧帽筋の下部繊維を鍛えることで、丸くなった胸を開くことができます。
菱形筋という筋肉を鍛えると、外に開いた肩甲骨を寄せることができます。
ブリッジというエクササイズでは、丸まった腰とお尻を伸ばすことができます。
頭を正しい位置で保持する筋力
全体的な姿勢の改善に加えて、頭が首の真上にある状態を維持するための筋力も、肩こり予防に必要です。
スマホやパソコンを使用していると、ついつい頭が前に傾いてしまいます。
いわゆるストレートネックの姿勢になってしまいますが、このときに、首の深い場所にある”頸部深部屈筋群”という筋肉が働いてくれると、頭が前に出ることを予防してくれます。
チンタックというトレーニングは、非常に地味ですが、頸部深部屈筋群を鍛えるのに効果的な運動なので、ぜひ習慣的に実施していただきたいです。
肩こりに効果的な筋トレはこちらの記事にまとめてあるので、ぜひご活用ください。
③ 肩に負担のかからない生活環境を整える
いくら姿勢を正し、肩こり予防のトレーニングに取り組んだとしても、普段の生活環境が肩こりを助長していたら、肩への負担を減らすことは難しいです。
デスクワーク中心の仕事など、どうしても肩に負担がかかってしまう環境にいる人も多いかと思います。
しかしそのような環境の中でも、少し工夫をすることで肩への負担を軽減し、肩こりを予防することもできます。
例えば、デスクワークをする際の机や椅子の高さです。
机が高すぎたり、椅子が低すぎたりすると、肩が上がり、首が後ろに倒れてしまいます。
このような姿勢を続けていると、肩の筋肉が縮こまり、拘縮して硬くなってしまいます。
反対に、机が低すぎたり、椅子が高すぎたりすると、パソコンを見る目線が下がり、頭が前に倒れてしまいます。
この姿勢では、首の後ろにある僧帽筋という筋肉が常に引っ張られた状態になり、緊張して張ってしまいます。
このように、普段から長時間過ごす場所の環境を、自分の身体が正しい姿勢を保てるように整えることが重要です。
これを理学療法用語で”エルゴノミクス”と呼びます。
エルゴノミクスはデスクワークに限ったことではなく、キッチンの高さ、テレビ画面の位置、枕の高さなど、様々な環境を整えることで肩にかかる負担を軽減し、肩こり予防に役立ちます。
まとめ
今回の記事では今すぐできる3つの肩こりを予防法を紹介しました。
正しい姿勢を保つことで、肩にかかる負担を減らすことができ、首と肩の筋肉をトレーニングすることで、姿勢と頭を正しい位置で維持することができます。
エルゴノミクスという考え方を取り入れることで、日常生活から肩へのストレスを軽減できます。
肩こりは非常に多くの方が悩まれている生活習慣病なので、誰でも肩こりになってしまう危険性があります。
少しでも肩に違和感を感じ始めたら、早めに予防法に取り組むことで、肩こりの悪化を防ぐことができます。
一度肩こりになってしまうと、症状が長引きやすいので、日頃から予防に努めることが何より大切です。
予防以外にも、肩こりに関する情報をお探しの方は、以下の記事を読んでいただければと思います。
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